信州大学×CATVnagano天王寺蕪は葉も食べますが、主に胚軸(茎と根の間の部分。一般的に蕪で食される部位)が食されるのに対し、野沢菜は主に葉を食べます。天王寺地区と野沢温泉村では土質が違うためか、京都から種を持ち帰って野沢温泉村でまいたところ、蕪よりも葉がよく育ち、“漬け菜”として広く普及するようになったのだと言い伝えられています(※諸説有り)。今では見た目も大きく異なる両者ですが、果たして本当に天王寺蕪が野沢菜のルーツだと断言できるのでしょうか?前述の森下正博氏は、天王寺蕪が野沢菜の祖先であることを証明しようと長年研究を続けている一人です。森下氏は、自ら考案した比較実験で種の特性を明らかにし、天王寺蕪と野沢菜は親子関係にある可能性を示唆する結果になったと総括しています。さらに、山形大学農学部教授の江頭宏昌氏によって、両者のDNA配列を解析した結果も最近になって学会で発表されました。これによると野沢菜の祖先が天王寺蕪だという可能性は高いといいます。現段階で「天王寺蕪の会」の難波りんご氏(右)と、元大阪府立食とみどりの総合技術センター主任研究員・農学博士の森下正博氏。天王寺蕪の普及に尽力したお二人が、「かぶらのうた」を披露大阪市内で天王寺蕪を栽培している西野孝仁氏は確実だと断定はできないといいますが、さらなる研究が進むことが期待されます。味だけでなく、文化を背負った伝統野菜天王寺蕪と同様に野沢菜も、その魅力を広く伝えようとする普及活動が野沢温が「野沢菜という存在に私たちが育ててもらったと思っているので、これからもその魅力を伝える活動を続けていきたい」と、その思いを語りました。伝統野菜の普及や存泉村で続いています。その1つが、「野沢温泉のざわな蕪四季會社(運営:野沢温泉観光協会)」が催す「蕪主総会」です。通信販売で村の野沢菜を購入した消費者を対象に懇親会に招待し、村人と交流したり、踊りなどを披露する他、翌日には野沢菜の収穫体験もしてもらうという体験型のイベントで、遠方からも多くの野沢菜ファンが参加します。番組では、野沢温泉観光協会代表理事の河野健児氏特別番組「信州の伝統野菜 野沢菜のルーツを探る旅」は、信大動画チャンネルでWEB配信しています。下記URLよりご覧いただけますので、ぜひご覧ください。信大動画チャンネルhttps://youtu.be/iJIib0-s92A四天王寺執事の吉田明良氏。四天王寺には2016年に建立された野沢菜伝来の記念碑がある続のために活動しているこうした多くの人たちの取り組みを受け、番組の最後に松島教授は「伝統野菜は味だけでなく文化を背負った存在だ」と実感を込めて語りました。また平山氏は、本学とCATVの連携によって今回このような番組ができたことに対し、「地域に密着したケーブルテレビと学術的知見をもった信州大学とが組んで、地域に残る映像を残すことができた」と、喜びを表現しました。信大動画チャンネル番組は5月から長野県内各地域のケーブルテレビ局で複数回にわたって放送されました。また信州大学動画チャンネルでも公開されています。伝統野菜の価値を発信し、後世につなごうと尽力する人々の想いが詰まった番組を、ぜひご覧ください。CATVとの連携事業では、2024年度も引き続き伝統野菜をテーマとした映像コンテンツを作成する予定です。08口伝を証明するため研究が進む映像で残す信州の伝統野菜映像アーカイブス2024
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