信大NOW146号
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本田秀夫センター長(以下、本田センター長):長野県発達障がい情報・支援センターは、長野県から信州大学医学部附属病院に運営を委託されるかたちで昨年の4月からスタートしております。元々は国で設置することが決められている「発達障がい者支援センター」が、県の精神保健福祉センターの中の1部門としてありました。これは発達障がいに関する相談支援や研修、啓発などを行うセンターですが、信州大学には発達障がいの専門家がいるという強みを生かし、様々な情報発信をしていこうという趣旨で、あえて“情報”という名称をつけて、昨年4月から長野県発達障がい情報・支援センターという形でスタートしました。 医師、教育学部の先生、それと教育経験者の方にスタッフとして加わっていただいて、県からの事業を引き継ぐという形で行っていますが、加えて様々な情報発信や研修を充実させようということで1年間取り組んできました。いわゆる相談支援は、電話相談が中心ですがこの1年間で200件ほど受けました。 それ以外に様々な研修を企画しており、既に4回研修を行って延べ3,300人の方に受講していただきました。また様々な県内の機関から講師派遣の依頼もあり、この1年間で延べ70回、合計で4,000人ほどを対象に研修も行っています。ホームページも6月に新たに作り、現在1万5,000人にユーザーとして視聴していただいているという状況です。長谷川アナ:阿部知事は今のお話を伺っていかがですか。阿部守一知事(以下、阿部知事):我々としては、飛躍的にこのセンターの役割が充実・強化をされていると思って大変感謝しています。本田先生はまさに発達障がいの第一人者ですし、またセンターは本田先生をはじめとして医療関係のスタッフの皆さんに大勢関わっていただいていますので、我々長野県ではできなかったことも含めて大変充実してきていると思っています。引き続きしっかり応援をさせていただきますので、センターがもっともっと充実をして不安や悩み、課題を抱えている多くの皆この1年で相談支援は200件、研修受講者は延べ3,300人、講師派遣は70回、ホームページユーザーは15,000人に。(本田)様に対する強力な支援になるようにご尽力いただければと思いますし、我々も一緒に取り組んでいきたいと思います。社会のあり方について、センター長はどう思われますか。本田センター長:課題があるとすると、一般の社会の中で発達障がいの人が当たり前に生きていくということが、まだちょっとハードルが高いかなという気がしています。文部科学省の調査で通常学級の中の8.8%のお子さんに何らかの発達の心配があるというデータがあります。もし実際にそうだとすると、発達障がいのお子さんはいわゆる特別な教育ではなくて通常のクラスの通常の教育の中でこそ支援していかなくてはいけないということになります。また、そういう方々が一般の社会の中で一般の会社などに勤めていただかなくてはいけないですね。ですから、多くの一般の方々が発達障がいの人の特徴を理解したうえで、対応していければいいのですけど、まだそこまでは辿り着いていないという印象があります。阿部知事:長野県では「障がい者共生条例」を2022年に施行していますが、この条例を作ったときに障がいとは何なのかということを改めて考えました。そこで思ったことは、身体的ハンディキャップで障がいになっている部分だけでなく、社会的な障壁が障がいになっている部分があるということです。社会のシステムがマジョリティに合わせたものになっていることから、マイノリティにとって大変生きづらく暮らしづらい状況になっている。この社会的な障壁の04「長野県発達障がい情報・支援センター」発足の経緯・実績について長谷川萌アナウンサー(以下、長谷川アナ):毎年4月2日は2007年に国連が制定した世界自閉症啓発デーです。また、この日から8日までを発達障害啓発週間と位置づけ、自閉症をはじめとする発達障がいへの理解を促すため集中して啓発を行っています。 この世界自閉症啓発デー、そして発達障害啓発週間のスペシャル対談として、発達障がい支援拠点としての役割がこの1年で、飛躍的に充実・強化された。(阿部)長野県の阿部守一知事と信州大学医学部附属病院「子どものこころ診療部」部長で「長野県発達障がい情報・支援センター」の本田秀夫センター長にお話を伺ってまいります。さて、同センターは去年2023年4月に開所してこの4月でちょうど1年となります。まず始めに本田センター長、センターの果たす役割や、この1年の実績などについてお話しいただけますか。発達障がいを持つ方と暮らすこれからの社会の在り方について長谷川アナ:発達障がいの方が生きていく2024年発達障害啓発週間厚生労働省スペシャル対談

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