収穫前の小麦畑。限られた農地での栽培になるため大型重機が入れず、生産性の向上が課題だ。する事業で、県産小麦の生産振興と利用拡大を目的に、業種を超えて食や農に関わる様々な事業者が参画しています。同プロジェクトでは試食会や学校給食で県産小麦100%使用のおやきやパンなど約2,100食を配布しました。田部井さんはその中心的存在として関係者との調整や、加工業者、消費者等への普及に奮闘。「これまで関わることがなかった業種の方と連携して推進することができ、壁は高いけれども取り組みの広がりを実感している」と話す様子は充実感に満ちています。えたきっかけ」と田部井さんは話します。一方で、小麦は湿気に弱いため、収穫期が梅雨に重なる日本では、収量・品質ともに安定して栽培することが難しい作物です。加えて、中山間地の多い長野県では、広大な土地の確保が困難で生産性をあげられないといった難しさもあります。一筋縄ではいかない、長野県のこうした小麦の地産地消に対して、田部井さんの思いが一層高まった経験がありました。コロナ禍やロシアによるウクライナへの軍事侵攻による影響で、外国産小麦や各種でんぷんの到着遅延が発生したことです。食の安定供給について、より意識的になったと田部井さんは振り返ります。県産小麦100%の小麦粉。この他にも様々な用途に対応したラインナップがある。田部井 ひろ美さん PROFILE静岡県出身。2002年、信州大学農学部食料生産科学科入学。食や環境問題に強い関心を持ち、ダチョウを通じた地域づくりに関する研究に取り組む。柄木田製粉株式会社入社後は、品質管理、出荷、営業、営業サポートなど様々な経験を積む。県産小麦の特性を熟知し、2023年から参画した「LFPながの(地域食品産業連携プロジェクト)」では、県産小麦の生産振興、普及拡大に向け、中心メンバーとして奮闘。育てることができます。そのため、ダチョウの家畜化による食料自給率の向上や地域振興などを目指していたそうです。学生時代からもともと食や環境問題に強い関心があった田部井さんですが、社会人になった当初は、大学での学びと日々の仕事があまり繋がらないと感じていた時期もあったそうです。しかし今振り返ってみると「大学での経験や人脈が財産になっている部分もあり、もっと多くのことを経験しておけばよかったと思う。学生の皆さんには、大学時代に色々なことに取り組み、より広い人脈を築いてほしい」と後輩へのエールを送ります。今後の展望について、「まずは、長野県で小麦が栽培されていることをもっと広く知ってもらいたい」と田部井さん。そして、コロナ禍やウクライナ問題をきっかけに食は当たり前ではないと実感したからこそ、これからも当たり前の食や生活が続いていくように、小麦の安定供給に寄与していきたいと強い想いを抱いています。また、一企業でできることは限られているため、地域をあげて産業が発展していけるようネットワークを広げていきたいとも考えています。県産小麦の地産地消に向けた挑戦は続きます。柄木田製粉の小麦粉を使用した様々な商品が本社内に展示されている。10小麦の供給を外国産に頼ることへの■藤日本は小麦の国内需要量の約8割を海外から輸入しています。柄木田製粉では、海上輸送で届いた小麦を内陸の長野県の工場に運び、製粉や製麺などの二次加工を経て、大消費地である関東にまた輸送し販売されるという流通ルートを辿ります。柄木田製粉入社後、輸送コストがかかるこうした仕組みに疑問を感じたことが、「小麦の地産地消に流通面から力を入れて取り組もうと考在学中から食に関心経験や人脈が財産に実は田部井さん、信州大学在学中は、ダチョウを通じた地域づくりの研究を行っていました。ダチョウは輸入飼料に頼らず、地域に生えている草で
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