理学部研究紹介2024
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(先鋭材料研究所)中野 研究室飯山 研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像中野 健央 助教2015年金沢大学大学院自然科学研究科修了。博士(理学)を取得後、南洋理工大学、相模中央化学研究所、立命館大学、京都工芸繊維大学、九州大学での研究歴を経て、2023年より現職。専門分野は有機合成化学、有機材料化学。飯山 拓 教授千葉大学自然科学研究科博士課程修了後、日本学術振興会特別研究員(東京工業大学)、信州大学理学部助手、助教、准教授を経て、2017年から現職。専門分野はコロイド�表面化学。人類の文明の進歩は、様々な「材料」の発展によって支えられてきました。特に近年では、従来の金属や無機材料とは異なる有機材料が活発に研究�開発されています。汎用元素から成る有機材料は、資源的制約が小さいだけでなく、「最新の有機合成技術に基づく一分子単位での精密な構造制御」によって、目標とする材料特性への綿密なアプローチが可能な点に魅力があります。その中でもπ共役化合物は、その構造(共役系)によって特異な電子的�光学的特性を示す興味深い化合物群であり、当研究室でも主な研究対象です。現在は特に、様々な複素環を構成単位とする非対称型の新規骨格(主にポルフィリンやホウ素錯体系の化合物)創製に注力しています。この戦略に基づき、「シンプルな構造でありながらユニークな光学特性を示す化合物」という、今後の材料開発のプラットフォーム確立を進めています。分子数個分の小さな容器に物質を閉じ込めることが出来たら、それはいったいどのような挙動を示すでしょうか? 身の回りのすべての物質は原子�分子からできていますが、物質系を構成する分子の数が極端に少なくなると固体�液体�気体といった「相」の区別があいまいになったり、通常とは異なる分子混合状態や反応などが生じます。物質の精製や除湿などに利用されているゼオライトや活性炭には、直径1nm という分子数個分の小さな孔(細孔)が大量に存在しています。私たちはこの細孔を「分子を閉じ込める小さな容器」として利用し、その内部に捉えられた分子集団に対してX線や中性子線による構造解析法を初めて適用し、水分子のクラスター(分子集合体)形成や、広い温度範囲で連続的に構造が変化する特異な相転移挙動などを明らかにしてきました。細孔が持つ「エネルギーを消費することなく分子を捉える」機能は、排気ガスや水道水からの有害物質除去、水素やメタンなどのエネルギー分子の安全な貯蔵、バイオマス由来ガスからの有用な成分の分離などですでに利用が開始されています。分子を「見る」ように現象を理解し、これらの高機能化、新規機能開発に寄与したいと考えています。物質が「混ざる」「凍る」といった身近な現象はアボガドロ数レベル(1023)の非常に大量の分子が存在していることを前提としており、微小空間ではその常識が通用しないような現象が起こりえます。エネルギーや環境の問題解決に資するプロセス開発を目指しています。上記内容で合成した新規骨格を基に、より具体的目標を持った機能性材料の開発を目指します。例えば、新たに合成した光機能性材料を光電変換システムに活用することで太陽光エネルギーの有効活用が可能となれば、化石燃料からの脱却に一歩近づきます。継続的に研究に取り組み、現代社会において課題となっているエネルギー�環境問題の解決に貢献していきたいと考えています。有機化学についての高い専門性を活かせる分野は材料や医薬品など、多岐にわたります。さらに、研究を通して身に付けられる「主体的に課題の発見�解決に臨む姿勢」は、あらゆる仕事において不可欠です。研究室生活で培ったスキルを発揮し、化学業界や教育界など、幅広い社会における卒業生の活躍を期待しています。装置開発(試料合成)、実験、解析、発表が全てできる人材の育成が研究室の教育目標です。多くの卒業生が化学系企業、装置メーカー等の研究者として活躍しています。博士課程を修了し、大学教員となった卒業生もいます。18様々な複素環を有するポルフィリン骨格外部刺激�環境によって発光色が変化する蛍光材料新しい測定原理による吸着量�吸着速度測定装置X線回折による実測とコンピュータ�シミュレーションの組み合わせにより決定したスリット型微小空間中のエタノール分子集団構造理学科化学コース理学科化学コース機能性材料を目指した新規π骨格の創製ナノ空間中の分子を見る

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