理学部研究紹介2024
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太田 研究室武田 研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像太田 哲 教授信州大学大学院理学研究科修士課程、総合研究大学院大学数物科学研究科博士課程修了。2017年から現職。専門分野は有機化学、有機機能化学武田 貴志 准教授北海道大学大学院理学研究科博士課程修了。東北大学多元物質科学研究所助教�講師を経て、2023年から現職。専門分野は構造有機化学、機能物性化学。「分子サイズのピンセットで分子やイオンをつかむ」私たちの研究室ではこのような研究を行っています。独自に開発した『酸化還元駆動型分子ピンセット』は、右図に示すように酸化還元反応に応答して構造が変化する「駆動部位」と、対象物質を捕らえる「分子認識部位」から構成され、分子認識部位の間隔が変わることによって対象物質をつかんだり放したりすることができます。その動きは実在のピンセットに似ています。当研究室ではこうした分子を使って、特定の金属イオンや分子をつかんだり放したりすることに成功しました。有機分子はその構造に由来した多様な運動を示します。一方で、有機分子を集めた有機分子集合体ではその運動は抑制されたり、運動の方向がランダムになることがほとんどです。分子を適切に設計すると、集合体での分子運動をコントロールできることがあります。私たちの研究室では有機合成の手法を用いて「動的な有機分子集合体」を創製し、その機能性を調査しています。例えば分子の運動をそろえることで目に見える大きな応力を発現するアクチュエーターを、極性分子を外部電場によって反転させることでメモリー材料を作ることができます。機械のような動きを示す分子を作ることは非常に挑戦しがいのあるテーマです。当研究室では、さまざまな動きを示す有機分子の開発を進めています。分子ピンセットはその一つです。今は基礎研究の段階のため捕捉対象は簡単な分子やイオンに限られていますが、将来は適切な分子設計を行うことによって、希少有用物質の回収や有害物質の除去といった応用が期待されます。研究室を出た学生の多くが化学系企業の研究職に就いています。今後社会に出てから直面する新しい課題にも柔軟に対応できるよう、研究室では化学の基礎原理に立ち返ってよく考えて研究を行うように指導しています。 有機反応の開発、有機分子の合成とともに有機分子集合体の構造制御とそれに基づく物性発現は有機化学の大きな研究課題です。有機分子の高い分子設計自由度から、有機分子集合体は新しい機能性を示す材料を提案できます。我々は基礎的な観点から、新しい機能を示す有機分子性材料を開発しています。それらが応用されることで、これまでにないような材料が創製されることが期待されます。卒業研究では、未知の研究を自ら進めることで、実験力、論理的思考力、問題発見�解決力、説明力など研究に必要な能力を深めていきます。卒業後は大学院に進学し研鑽を深め、化学系企業に就職し、研究者として活躍している方が多くいます。17酸化還元駆動型分子ピンセットの原理図(上)と実際に合成された化合物の分子モデル(下)アイディアをすぐにフラスコの中で試せるのが化学の強み。日々の実験の積み重ねから新しい化合物がうまれる。有機合成を用いて運動性分子を適切に並べて、その中で分子を動かすと巨視的な運動にできる。アルキルアミド基の外部電場に対する共同的な回転に基づく、強誘電性を示す液晶材料理学科化学コース理学科化学コース酸化還元反応によって動く      分子サイズのピンセット分子運動に基づいた機能性有機分子集合体

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