教授増木 静江地球温暖化、超高齢社会の社会問題に際し、その打開策を社会に提供することを理念とします。人類はその誕生以来、その優れた二足歩行による運動能(移動能)、環境適応能(体温調節能)によって地球上に広く分布してきました。しかし、最近の食糧・医療事情の改善、さらにアメニティの充実は、これらの能力を劣化させる一方、アメニティ獲得のための資源エネルギーの増大は、資源の枯渇、地球温暖化を促進させるという悪循環に陥っています。そこで、人類が生来持っている遺伝形質を再活用してこの悪循環を断ち切るという立場から研究を行っています。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像様々な細胞に分化できる多能性幹細胞を使うことで、疾患のある器官に健康な細胞を移植して治療したり、組織や器官を再生することも不可能ではなくなってきています。私達は、器官の発生原基や、多能性幹細胞を用いて、細胞や組織・器官の発生機構を調べたり、再生の方法を研究しています。また、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の技術を応用して、癌や遺伝性疾患の研究も行っています。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像日常参加者は自宅周辺でインターバル速歩を行い、月に一度地域公民館を訪れ携帯型カロリー計の歩行記録をサーバに転送する。そして、折り返し送られてくるトレンドグラフ〔右上〕にしたがってトレーナーなどから指導をうける。さらに最近、同システムのスマホ・アプリを開発した。運動時の食道温、皮膚血流量、発汗速度を測定する。運動は炎症促進遺伝子(NFkB1,NFkB2など)のメチル化をおこし、活性を抑制し、生活習慣病を改善する。多能性幹細胞を心筋に分化させた心筋に特異的な構造とタンパク質が確認できる成長因子を用いると腎臓をつくる尿管芽が複数誘導される網膜芽細胞腫をリプログラミングしてできた癌幹細胞様細胞・運動時の熱中症予防のための方策の提供・生活習慣病・介護予防と治療のための方策の提供・運動効果発現のエピジェネティックメカニズムの解明私たちは、「インターバル速歩トレーニング」を核に、IoTを利用して遠隔型個別運動処方システムを開発し、5ヶ月間の同トレーニング効果について遺伝子も含め数千人規模のDBを構築しました。今後、このDBをもとに被験者の属性から同トレーニング効果の未来予測式を開発し、同トレーニングの国の内外への普及をめざします。これによって医療体制の治療から予防へのスムーズな移行をめざします。運動生理学・応用生理学を専攻する基礎研究者、運動を核とした予防医療・リハビリテーション医学を専門とする研究者・医療従事者、健康機器・健康食品など健康サービス産業に関係する企業の研究者など・癌細胞のリプログラミングiPS細胞作製の技術を使い、癌細胞を「元に戻す」ことで発癌機構の解明や治療法の開発を目指しています。・腎臓の発生と再生に関する研究腎臓の基になる組織がどのようなメカニズムで維持され、分化するかを、動物の腎臓発生原基を使って調べています。・疾患特異的iPS細胞を用いた病態解明エーラスダンロス症候群という遺伝性疾患の原因を研究しています。・多能性幹細胞におけるエピジェネティック因子の機能解析体の細胞は、持っている遺伝情報は同じでも、多様な形質を維持してます。その理由を研究しています。器官発生メカニズムなどを利用した再生医療は、将来の発展が期待されます。組織・器官再生に加え、癌や遺伝性疾患も原因の一端が解明できるかもしれません。卒業生には医療関係の仕事のほか、大学や民間で研究している人が多くいます。スポーツ医科学組織発生学准教授城倉浩平22024-2025医学科研究紹介社会問題解決型の運動⽣理学をめざす︕組織・器官の発⽣、再⽣の仕組みを調べ疾患の原因を探る
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