教授村田敏規アドレノメデュリンと呼ばれる血管を拡張させる体内物質があります。最近になりアドレノメデュリンが網膜の病気をよくする可能性がでてきました。私たちはアドレノメデュリンやその作用に必要なRAMPという物質が眼にどのような影響を与えているのか着目しています。ノックアウトマウスと呼ばれるアドレノメデュリンやRAMPが先天的に少ないマウスを用いて、人工的に網膜に血管閉塞や新生血管をレーザー装置を用いて作りその物質で良くなるか、悪くなるかを研究しています。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像教授工 穣耳鼻咽喉科頭頸部外科では、聴覚・平衡覚・嗅覚・味覚などほとんどの感覚器を扱います。中でも聴覚はヒトの重要なコミュニケーションツールであり、その障害によってQOLは大きく低下します。当科では難聴のメカニズムや新規治療法を探る研究を行っています。また、頭頸部領域には鼻腔、口腔、舌、咽頭、喉頭、頸部食道などが含まれ、嗅覚・摂食・嚥下・音声などヒトが生きていくために重要な機能を司っています。それぞれの部位に発生する癌はQOLを大きく低下させ、命の危険も伴います。多種多様な頭頸部癌を遺伝子発現から捉え、新たな治療ターゲットを見つける研究を行っています。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像とある実験をしたRAMPノックアウトマウスの網膜の展開標本血管が緑に映っている細かい血管がとても神秘的だ新生血管を特殊な液でそめて大きくしたものアドレノメデュリンが働くか働かないかで大きさが変化する…耳鼻咽喉科頭頸部外科学教室メンバー人工内耳を介したDDSによる蝸牛神経保護・治療に関する研究遺伝子発現解析による頭頸部癌の微小環境解析ヒト遺伝性難聴モデルに対する病態解明と新規遺伝子治療開発レーザー装置EMBOpressより・マウスの網膜疾患に対するアドレノメデュリンおよびそのファミリーペプチドの影響に関する研究・臨床現場における眼科イメージングと治療成績の研究高齢化社会が進むにつれて、糖尿病網膜症や加齢黄斑変性症などの目の病気が増えることが予想されます。これらの病気にはすでに様々な治療がありますが、もしかすると将来的にこのアドレノメデュリンが治療の1つの選択肢になるかもしれません。卒業後は引き続き当院眼科医局で勤務しながら研究したり、臨床に専念したりします。中には学位取得後に市中病院へ勤務される先生や開業される先生もいます。1,人工内耳を介したDDSによる蝸牛神経保護・治療に関する研究2,耳科疾患診断・治療のデータベース構築と新規AI 診断・解析システム開発3,ヒト遺伝性難聴モデルに対する病態解明と新規遺伝子治療開発4,進行性難聴により前庭障害を起こす因子とメカニズムの解明5,遺伝子発現解析による頭頸部癌の微小環境解析6,頭頸部癌患者におけるがんリハビリテーションの有効性に関する検討7,長野県の空中花粉の多様性と地域性に関する検討難聴の根本的な治療法はまだ一つも見つかっていません。当教室の研究により、新たな耳科疾患の治療モデルが見つかり、将来的に多くの難聴患者さんの治療に役立つ可能性があります。また頭頸部癌の新たな治療ターゲットが見つかることで、癌治療を大きく向上させる可能性があり、夢は広がります。大学病院で診療の研鑽を積みながら、研究を続けることが出来ます。また海外留学や国内の研究施設で研究を発展させることができ、教室として積極的に支援します。耳鼻咽喉科頭頸部外科学眼科学信州大学医学部医学科発行年月:2024年7月発行:信州大学医学部29将来の眼の治療薬︖「アドレノメデュリン」⽿科疾患や頭頸部癌のあたらしい診断・治療を⽬指して︕
元のページ ../index.html#34