医学科研究紹介2024_2025
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(チーフ:教授・野見山哲生)教授野見山哲生子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)-未来の子どもたちへの贈り物-2011年より実施しています。日本中で10万組の子どもたちとそのご両親に参加していただく大規模な調査です。「エコロジー」と「チルドレン」を組み合わせて「エコチル調査」と言います。赤ちゃんが13歳になるまで、定期的に健康状態を確認し、環境要因の子どもたちの成長・発達への影響を調査します。調査の結果、子どもたちが健やかに成長できる環境、安心して子育てができる環境の実現を目指します。13歳以降、40歳まで調査を継続することが決まり、計画が進められています。その他の研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像教授浅村英樹(教授浅村英樹)高い精度で個人の身元確認が可能なDNA鑑定ですが,死後長時間が経過しているご遺体や高度損壊のご遺体からは状態の良いDNA試料が得られず,個人識別が困難となります.そこで,このような劣化したDNA試料からでも十分な身元確認を行うための分析技術の開発に,日々研究を重ねています.これまで,この技術を応用して分析を行い,世界で初めて縄文時代人のY染色体系統分類に成功しています.このほか,一見健康そうな人が突然亡くなる「突然死」のなかで,高齢者突然死と老人性全身性アミロイドーシスの関連,あるいは向精神薬服用者の突然死の原因究明、さらに、中毒物質の検出法の開発および死因究明に有用なマーカーの検出についても研究を進めています.主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像【調査で明らかにしたいこと】子どもの健康に影響を与える化学物質などの環境要因と健康への影響を調査【調査の流れ】赤ちゃんが13歳になるまで調査を行い、成長発達に影響を与える環境要因を解明親子鑑定例心筋への広汎なアミロイドの沈着向精神薬服用者急死例の半数近くで,特定の遺伝子の変異が認められた母親子供父親他人当教室では、エコチル調査の他にも複数の研究テーマを展開しています。・化学物質の健康への影響を調べる実験、疫学研究(例:重金属、微量元素と神経発達症の関係)・労働者の健康管理に資する研究(例:職業曝露、職業性ストレスと健康状態との関連)・レセプト情報、レジストリなどの大規模データを用いた疫学研究エコチル調査の結果にもとづき、子どもの成長や健康に影響をあたえる原因が明らかになります。明らかになった原因物質について有効な対策を立てることで、子どもたちが健やかに成長できる環境、安心して子育てができる環境の実現を、未来に向けて実現することができるようになります。・調査研究を行う研究者としての医師として大学教員や研究者になることができます。・医学部を卒業後、衛生学、公衆衛生学の予防の領域で活動する医師になることができます。(例:医系技官(国、都道府県)、産業医)・臨床の場で調査結果を活かす医師として活動ができます。・DNA劣化試料に対する分析法の確立と鑑定精度の向上・SNP解析によるY染色体系統分類法・高齢者突然死と老人性全身性アミロイドーシスの関連性・向精神薬服用者の突然死と遺伝子変異の関連性・中毒物質の系統的分析方法の開発・死因究明に有用なマーカーの探索法医学が担っている死因究明業務は,社会的に極めて重要な責務と位置付けられています.そして,精度の高い死因究明を実践していくためには,法医学研究の一層の発展が必要であることは言うまでもありません.将来的に法医学を専攻する医師の場合,法医認定医や法医指導医の資格を取得し,死因究明の最前線で活躍することができます.また,医師でなくても,DNA分析や薬物分析の技術専門者として活躍する場が多くあります.衛生学公衆衛生学エビデンスに基づく医療・公衆衛⽣の実践衛生学公衆衛生学法医学法医学信州大学医学部医学科発行年月:2024年7月発行:信州大学医学部7G1927A(G643S)法医学は死因究明に関する社会的責務を果たしています

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