図1. TWINSPAN解析による群落分類写真1.クロツバメシジミと食草のツメレンゲ表1. 各ルートにおけるツメレンゲのシュート数と先行研究(坪井・大窪 2008)との比較 (内 先行研究における結果)認されなかった。ツメレンゲはオオキンケイギクやハリエンジュ、クズと同所的に分布し、外来多年生草本だけでなく外来木本や在来のつる性多年生草本によっても被陰されている状況が明らかになった。ツメレンゲのシュート数調査では、全ルート合計で7,198シュート確認され、出現メッシュ数はルートA・Bでは増加していたが、シュート数や1メッシュあたりのシュート数は全ルートで減少しており、特にルートCでは著しく減少し、ルートFでは確認されなかった(表1)。以上、両種の関係性の低下と消滅が明らかとなった。植生調査の全出現種は46科112種で、そのうち外来種は13科26種(23.2%)で外来植物率が高かった。出現頻度の高かった外来種はオオキンケイギクやハリエンジュ、メマツヨイグサ等だった。さらに特定外来生物のアレチウリが確認された。TWINSPAN解析から全177プロットはオオキンケイギクの出現で2分され、11群落型に分類された(図1)。ツメレンゲが多く出現した群落型では砂土と砂壌土の割合が高かった。石積堤防は98プロットで、土壌深度はクズの出現頻度の高い群落型で比較的大きかった。今後さらに競合種が分布拡大した場合、両種のハビタットとしての質の低下が懸念された。環境への長野県南部の天竜川水系ではシジミチョウ科で準絶滅危惧種のクロツバメシジミ東日本亜種の生息が確認されている(写真1)。本亜種はベンケイソウ科のツメレンゲ(準絶滅危惧種)を食草として利用し、本調査地では本種が確認されている。しかし、15年前に実施された先行研究において、本調査地では特定外来生物・オオキンケイギクが侵入・定着しており、優占度の増加が本亜種とツメレンゲの関係性の保全に負の影響を与えることが指摘された(坪井・大窪 2008)。また本調査地では外来木本・ハリエンジュの優占度の増加がツメレンゲ群落を被陰し、減少させることについても懸念されている(中原・大窪2018・2019・2020)。したがって、本研究の目的は希少種であるクロツバメシジミ東日本亜種の個体群およびツメレンゲと周辺群落、遷移の進行程度、立地環境条件等を把握し、過去と比較することで両種の関係性の保全について検討することとした。調査地は長野県南部の天竜川本川とその支川の一部に位置する。先行研究(坪井・大窪 2008)と同様の場所にルートA・B・F・Cの計4ルートが設置された。本亜種の成虫の総個体数は、先行研究と比較して減少した。ルートBでは成虫が減少、ルートC・Fでは確認されなかった。また、ルートC・Fでは卵・幼虫・蛹も確2-1 環境教育卒業論文農学部農学生命科学科 森林・環境共生学コース 佐藤 温天竜川水系におけるクロツバメシジミ東日本亜種とツメレンゲのハビタットへの外来植物の影響と経年変化1902取り組み修士論文・卒業論文
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