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研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例主な研究事例 出会いはファーストインプレッションが大切と言われますが、企業との出会いはそれではちょっと危険かもしれません。会計は企業と企業外部の様々な利害関係者のコミュニケーションを促進するツールであり、会計情報を分析することで真の企業実態を把握することができるようになります。さらに、企業の実態に迫るために、経営者や社員等にインタビューしたり、管理会計手法を適用することで、よりよい経営の実現をサポートすることもできます。また、環境問題への取組みとして環境管理会計手法を活用した企業の環境負荷低減についての研究を進めています。  関 利恵子 教授明治大学商学部卒業後、2000年明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得修了、同年10月 信州大学経済学部着任。講師、准教授を経て2023年より教授。2009年博士(経営学)。専門は経営分析・管理会計。 図形の概形を数学的に調べる位相幾何学とその応用を研究しています。穴が開いていたり、分割されたり、同じものが積み重なっていたりする図形の性質をどう特徴づけるかが大きなテーマです。特に図形の複雑さを数値化して、分類することに興味を持っています。 そのような古典的な不変量として、オイラー標数が知られています。これは図形の頂点の個数から辺の本数を引いてさらに面の個数を足して定義される素朴な値です。正多面体が何種類あるかの分類などに古くから使われてきました。最近の応用として、オイラー標数に関する積分によって、センサーを備えた領域上に散らばる人や物の総数を数え上げる手法が確立されました。この他にも様々な実学的応用も考えています。田中 康平 准教授2005年信州大学理学部卒業後、高校教員を経て、2013年信州大学大学院総合工学系研究科博士課程を修了。同年より信州大学経済学部に着任。現在に至る。専攻は代数的位相幾何学および応用トポロジー。 会計が果たす役割は、近年益々重要なものとなってきています。農業、環境問題、SDGsなど一見すると会計とは無関係と思われる分野にも密接に関わってきています。これまで私は県内中小企業にコスト削減と環境負荷低減を同時に可能とする環境管理会計手法のMFCA(=マテリアルフローコスト会計)の導入支援に携わり、手法がもたらす組織への効果・影響を研究してきました。MFCAは従来の原価計算とは異なり、工程内の原材料の実際の流れを投入物質ごとに金額と物量で把握し、製品も廃棄物も一つの製品とみたて、廃棄物の配送・処理コストもコストとして把握する手法です。この手法のコストダウン効果は省資源・省エネに通ずるものとして注目されてきました。またこれまで管理会計がなじまないとされた農業経営でも導入研究が進められています。 このように管理会計・財務会計はあらゆる業種、職業と密接に関わっており、社会人として必須のツールでもあります。したがって、卒業後の進路に関わることなく会計の学びは様々な活動で活かされると思います。 従来の位相幾何学は、目に見えない、描くこともできない複雑で高次な図形を特徴づけるために、抽象的な議論が主体になっていました。近年になって、この位相幾何学が、工学やデータ解析に利用できることに研究者たちが気づき、「応用位相幾何学(Applied Topology)」という新しい分野が急速に発展しています。 上記でも述べたセンサーネットワーク理論はもちろんのこと、現在最も着目されているのは、データ解析への応用かもしれません。膨大な点の位置情報が与えられたとき、その配置を位相幾何学を通しておおよその形状で分類する方法です。このとき重要な道具が「パーシステントホモロジー」と呼ばれる点配置に現れる「穴」の情報を拾い上げたものです。現在までにタンパク質の構造解析やガラスなどのソフトマター構造の特徴付に貢献してきました。 現在の情報社会で、データ解析は企業にとっても重要であることは言うまでもありません。新たな手法を自ら開発し、それを自在に使いこなせる人材が期待されます。8上:従来の原価計算手法による原価把握下:MFCAによる原価把握・農業における管理会計手法の適用・ 農福連携施設における障がい者に向けた管理会計手法を活用した目標管理手法の研究・MFCAを活用したSDGs経営の推進左: センサーネットワークグラフP上のN個のターゲットによる カウント関数h【N=5】 右:オイラー積分によりターゲットの総数を与える式左:松本市のバス停留所位置データから得られるパーシステント図右:長野市のバス停留所位置データから得られるパーシステント図 組合せ論的に構成される空間(図形)の不変量の導入(オイラー標数、LSカテゴリー、Topological complexityなど)と、それらの工学、データ解析へ応用。特に、センサーネットワークやロボットモーション設計、パーシステントホモロジーを用いた位相的データ解析。ỶὅἩἕἚҾ஬૰ᾁύ὿὿὿όίᾀ὿὿Ὢὸᾇ὿὿όь߻ᝲỶὅἩἕἚҾ஬૰ᾁύ὿὿὿όίᾀ὿὿Ὢὸᾇ὿὿όь߻ᝲࡑూཋᾄᾅ὿όίᾁ὿ὪὸဃငἩἿἍἋỴỸἚἩἕἚᙌԼᾀ̾ᾁύᾇ὿὿όίᾇ὿ὪὸỴỸἚἩἕἚᙌԼᾀ̾ᾁύᾁᾃ὿όίᾇ὿Ὢὸਫ਼ࢊϕϫιηϔϧρέϚρέη応用経済学科応用経済学科イメージに左右されない真の企業実態把握と活力ある組織の仕組みづくりに挑戦!図形の「形」の複雑さを数値化し、身近な問題へ応用する

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