新しいブック
5/28

研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例主な研究事例 マクロ経済学を専門に経済成長や所得格差について研究しています。具体的には、「なぜ日本経済が1990年代以降停滞しているのか?」、「それと同時に1970年代以降、先進諸国で所得格差が拡大した理由は何か?」といった問題を研究してきました。最近では、「なぜ1800年前後にイギリスにおいて産業革命が起こったのか?その一方で、なぜ中国などの欧米以外の地域で産業革命が起こらなかったのか?」に関心を持ち、研究を行っています。 研究は、理論を構築し、その理論をコンピュータを用いて数値計算し、それをデータと比較して検証するアプローチで行っています。青木 周平 教授東京大学教養学部卒業後、東京大学大学院経済学研究科博士課程を修了し博士(経済学) を取得。財団法人総合開発研究機構 (NIRA)、一橋大学イノベーション研究センター、同経済学部を経て現職。 しばしば、企業の営利活動は悪い行いとしてニュースになります。例えば、商品に含まれる成分や原料産地を偽装したり、不要な商品を売りつけるような企業があります。 しかし、多くの企業は正しく営利活動をして、経済の発展を支えています。メーカーは市場を分析し、ライバル企業よりも消費者を満足させる製品を生み出すことで、売上を上げることができます。また、小売業者の利益は、消費者に支持される品ぞろえや価格設定により得られます。このように、製品開発や販売活動を通じて企業と消費者の利益を両立する活動が「マーケティング」です。本研究室ではこのような活動の高度化に貢献するために、より良くマーケティングを行う方法を研究しています。石橋 敬介 准教授2012年3月に東京大学公共政策大学院を修了。その後、民間の研究機関である流通経済研究所で、10年にわたりマーケティング分野の研究に従事。2021年11月に筑波大学大学院で博士(経営学)を取得。2023年より現職。 上にあげた経済成長や格差の問題は、社会的・政治的にも重要であるといえます。イギリスのEU離脱やアメリカのトランプ大統領の誕生等の2010年代の政治現象の背後には、人々が所得や生活に対する不満を抱えていたことにあるという分析もあります。経済成長や格差の原因を解明することは、マクロ経済学の分野でも未解決の難しい問題ですが、一歩一歩明らかにしていきたいと考えています。 教育では、研究でも使用しているプログラミングの技術を習得してもらい、これを用いてデータ分析できるようになることを重視しています。プログラミングに付随する、「複雑な問題を単純なブロックに分解し解決していく」アルゴリズム的考え方は、会社などで計画を立てて実行していく上で重要な技能です。しかしながら、多くの学生は、アルゴリズム的考え方に不慣れです。ゼミでは、教員・学生間で対話する演習形式で、こうした内容を習得していきます。 ゼミ生の卒業後の進路は、メーカー、銀行、大学院進学等です。 マーケティングは実学的な学問分野であり、その研究の進歩は企業の利益と消費者満足に貢献します。特に近年は、消費者のデータを活用したマーケティング手法が進歩しています。 例えば、我々がネット通販で買い物をしたり、スマートフォンで小売店のアプリを入れていたりすると、自分の関心に近い商品のクーポンが送られてくることがあります。これは、消費者にとっては興味のない商品のクーポンがむやみに届くよりも望ましく、企業にとってはクーポンが使われれば売上が上がります。このようなプロモーション活動は、情報技術の進展により行われるようになったものです。 本研究室では、マーケティングの基本的な手法に加えて、消費者の購買履歴などのマーケティングデータの分析方法を学ぶことができます。この分野を学んだ卒業生は、主に民間企業において、製品開発や顧客開拓、広告・販売促進といった業務で活躍することが期待されます。4アメリカの所得上位1%シェアのデータと理論値 1970年代以降、アメリカにおいて、最もお金持ちの人達の所得が国全体の所得に占める割合が増えています。人口の1%の高所得者の所得が、国全体の個人所得に占める割合を、「所得上位1%シェア」といいますが、これが増えているのです。これは高所得の人達とそれ以外の人達との格差が広がっていることを示しています。 私の研究では、この現象を1970年代以降の税制の変化 (累進所得税の減税など)で説明する理論を立てて、数理モデルを作りました。数理モデルの値(理論値)と現実(実データ)を定量的に比較し、この理論で所得上位1%の変化をある程度説明できることがわかりました(上の図を参照)。スーパーの店舗で消費者にアンケートをするなど、実地に出向いての調査を積極的に行っています。マーケティングデータの分析も行っています。上図は卸売市場での農水産物の価格予測であり、産地の出荷計画の立案に役立ちます。 食品業界を中心に、多様な手法で研究をしています。例えば、大規模な販売データの統計分析、小売店舗での販売促進のフィールド実験、新商品の試食調査、被災地産品の購入に関するインタビュー調査などを行ってきました。応用経済学科応用経済学科経済成長と所得格差の原因を定量的に探求する消費者の暮らしを豊かにしていく、企業のマーケティング活動を高度化する

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る