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行政組織法研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例主な研究事例 国や地方公共団体などが行う行政に関する法である行政法を専門としています。行政法の中でも、私は、行政の組織に関する法である行政組織法を中心に研究してきました。現在は、特に、行政組織法による行政統制のあり方に関心があります。具体的には、行政統制の一つの局面である裁判において行政組織法が働くか、働くとしてどのような裁判の帰結をもたらすかという問題を検討しています。さらに、今後、裁判以外の行政統制の局面において行政組織法がどのように働くかという問題を検討することを予定しています。船渡 康平 准教授東京大学法学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了。東京大学大学院法学政治学研究科助教を経て、2020年4月より、信州大学経法学部准教授。 捜査機関が実施する捜査を規律するルール(法)を研究しています。刑事訴訟法という分野になります。 刑事訴訟法という分野のなかでも、特に、おとり捜査など、対象者に気づかれない状態で行う秘匿捜査を規律する仕組みを開発しています。私の研究の特色は、いかに違法な捜査を抑制するかではなく、いかに適法な捜査を担保するかという視点で、仕組みを構築する点にあります。この視点は、例えば学生が本を読む時間をどう確保するかなど、社会のあらゆる仕組みづくりに役立つものと考えています。 現在では、捜査機関におけるデータの取扱いから転じて、情報リテラシー教育なども関心をもって研究をしています。丸橋 昌太郎 教授社会基盤研究所長東京都立大学院(修士(法学))後、信州大学経済学部准教授を経て現職。 行政組織法の研究を進めると、地方自治法や公務員法など、行政組織法に関係の強い分野を考察する必要が生じます。また、行政組織法は、行政法の中でも特に隣接諸学との関係が深い法であるといわれています。今後は、行政組織法以外にも領域を拡大すること、また、隣接諸学との関係を意識した研究をすることが課題となります。 教育面では、行政法に関する基本的な知識・ものの考え方の習得を狙う講義科目(行政法など)、講義で習得した知識・考え方を基礎として、具体的な社会問題との関係で課題を発見し解決する能力の養成を狙う演習・実習科目(行政法演習・行政法務実習)を担当しています。卒業後、公務部門に進む場合には、行政法で得た知識や考え方を基礎とした、法令・条例の運用や、政策課題の発見、政策課題に対する解決策の立案・法制化が期待されます。民間部門に進む場合にも、行政法に属する様々な法的規制との関係を意識しつつ業務を遂行することが期待されます。 私の研究は、企業や行政の危機管理にも応用が可能なので、これらの組織の研修にも活用されています。 また違法を抑止するのではなく、適法を担保するという視点は、たとえば医療訴訟をおそれて医療の現場が委縮してしまう現象に対しても、応用可能です。医療の現場からは、医療過誤をどう抑制するか、というよりも安全な医療をどう確保するかを考えることが求められているのです。 教育では、長野県警や長野地検の協力を得て、勾留請求をしたり、実況見分調書を作成したりする実習も行っています。実際にやってみることで、身につくことがたくさんあるばかりでなく、今の勉強が社会でどのように生かされているかを知る機会になり、今やるべきことをわかるようになります。その結果、受講した学生たちは、県警や検察庁だけでなく、広く公官庁にも就職しています。法曹を目指す学生にも有益なものとなります。裁判で働くか?どのような帰結か?裁判以外の統制の局面では?22行政組織法について検討している・検討を予定している問題。・ 行政組織法が取消訴訟において裁判規範として機能するか、機能するとして裁判の帰結はいかなるものかについての研究(「行政法における組織規範の法的性質(1)−(6・完)」国家学会雑誌134巻1=2号−135巻3=4号(2021-2022))。・ 立法の違法確認訴訟を適法とした最高裁判決についての研究(「最大判令和4年5月25日の行政法上の論点」YOLJ-L2209004(2022))。県警の協力を得て、指紋採取の実習・ 黙秘権と自己負罪拒否特権の意義についてー憲法37条、38条の再構成・弁護士依頼者間秘匿特権の形成過程・すり替え窃盗をめぐる理論と課題・地域と法学・ 刑訴法 逮捕するべき人を捜索するためにホテル客室に立ち入った行為が違法とされた事例総合法律学科総合法律学科行政組織法による行政統制について考える捜査機関が適正に捜査する仕組みを創出

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