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研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例主な研究事例 立憲民主政に依拠する国家の仕組みについて研究しています。立憲民主政とは、基本的人権が平等に保障されるための政治の仕組みです。この仕組みは、古くは古代ギリシャ・ローマ時代に淵源をもち、17世紀〜18世紀のイギリス、アメリカ合衆国、フランスにおける「近代市民革命」によって実現されました。 この仕組みが、日本に本格的に導入されたのは、1946年制定の現行日本国憲法によってです。日本国憲法の特徴は、徹底した平和主義です。日本国における立憲民主政の展開において、平和主義の果たした役割は無視できないと考えています。成澤 孝人 教授早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。津市立三重短期大学講師、助教授、信州大学大学院法曹法務研究科准教授、教授を経て現職。 働くことに関わるルールを定める労働法や、生きていくなかで病気にかかったり、高齢となったときなどに生活を支えてくれる法制度である社会保障法を研究しています。その中でもとくに、企業が分割したり事業譲渡したりするなど企業の組織再編が行われる際に、そこで働く労働者の権利をどう保護すべきなのかを中心的テーマとし、ドイツを比較対象国として研究を進めています。 労働法や社会保障法は、多くの法改正が行われている分野であり、社会問題とも密接にかかわる分野です。各改正が制度全体のなかでどのように位置づけられているのか、その意義や問題点を探ることを研究の目指しています。成田 史子 准教授東京学芸大学修士課程終了・東京大学法学政治学研究科博士課程単位取得退学後、弘前大学人文社会科学部専任講師を経て、2020年より現職。 権力者は、憲法を遵守することによって、権力を真に国民のために使用することが求められます。そのような「善き統治」を実現するのが憲法の役割だというのが、今のところのわたしの研究成果です。 しかし、仕組みが存在するだけでは、そのような社会は実現しません。憲法の仕組みを実際に動かす人が存在しなければなりません。 憲法を実現する主体は、第一に、権力に批判的に対峙する市民です。次に、市民が選挙で選ぶ国会議員は、行政権を批判的に統制する役割があります。また、法によって紛争を解決する裁判官も、行政権、立法権の違法な活動を抑制するという役目をもっています。メディアは、権力を批判的に監視することによって、国民の知る権利を保障し、立憲民主主義社会の発展に寄与します。 公務員は、憲法の想定する「善き統治」の実現にはかかせない存在です。経法学部には、公務員志望者が多いですが、憲法をしっかりと学び、国民と住民のニーズにこたえられる公務員になってほしいと願っています。 労働法も社会保障法も、みなさんの日々の生活と密接に関係する学問領域です。現行の法制度がどうなっているのか、そこにはどのような問題点があり、どのような改正が必要なのか、あるいは、これまでなかった新たな問題に対処するために、どのような法制度が必要なのかを考えることは、自分自身だけでなく自分の家族や大切な人を守ることにもつながります。 教育面では、研究活動を通じて交流のある使用者側と労働者側の日本を代表する弁護士の方々をお招きし、双方の立場から実務の現場で、労働法がどのように使われているのかを講義していただいています。また、労働基準監督官等の業務を体験する実習も行っており、これをきっかけに労働基準監督官を目指す学生も多くいます。 労働法や社会保障法の知識は、現在アルバイトをしている場合にも、将来、公務員を目指す場合や民間企業に就職する場合であっても、あるいは起業する際にも必ず役立ちます。また、自分自身や周りの人たちを助けてくれるものです。19市民向けの講演活動にも力をいれている。須坂市豊洲地域公民館での「出前講座」の様子。 議院内閣制の憲法構造について、日本とイギリスの比較研究をおこなっています。同時に、憲法を支える政治哲学として、共和主義という考え方に関心があります。これらの視点から、2021年に、イギリス議院内閣制における大臣の個別責任に関する論文を書きました。コロナ禍で中断してますが、イギリスの研究者との国際交流にも力をいれており、2018年にリバプール大学で、2019年にエジンバラ大学で、報告をおこないました。ドイツ・エアフルトにある連邦労働裁判所 現在主に、企業が分割や事業譲渡、合併などのいわゆる企業組織再編を行う際に、そこで働く労働者の雇用や労働条件などをどう維持するか、新しい使用者のもとへ労働者をどう承継させるかなどの法的ルールの構築方法について研究をしています。その際、ドイツ法と比較しつつ研究を進めています。総合法律学科総合法律学科権力はなぜ統制されなければならないのかを学ぶ働くことに関わる法制度を学ぶ

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