新しいブック
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高校生の皆さんへ 信州大学経法学部は、社会科学の教育・研究を担っています。社会科学とは、私たちが暮らす社会を対象として、科学的アプローチで研究する分野です。応用経済学科では、経済学、経営学、総合法律学科では、法学、政治学の教員が、日々、教育に勤しみ、研究に励んでいます。いずれも、社会を分析対象とする学問分野ですが、研究のアプローチは異なります。経済学では、社会現象を数学的なモデルで描写し、様々な社会データを用いて、分析を行います。数学的モデルで抽象化する理由は、私たちが社会について考えようとすると、直観や思い込みにとらわれたり、感情に流されたりすることが少なくないからです。数学を用いて論理的に状況を整理することで、客観的に物事を捉えようとするのです。客観的な証拠に基づく思考は、今注目されるデータサイエンスに関連する側面が多く、現在、データサイエンス教育にも力を入れています。法学は、社会問題や事件の解決に法律を適用する際、普遍的な客観的基準を、一貫した論理によって調整できるか、言葉を使って考えていきます。個人の主観や恣意に左右されて、場当たり的な対応になっては困るからです。裁判官や弁護士といった法曹の世界への人材輩出に取り組むとともに、最近では、企業などの法務部門での人材ニーズが強まっていることから、法学の知識を用いて活躍できる人材の養成に取り組んでいます。アプローチが異なるとはいえ、経済学も、法学も、より暮らしやすい、豊かな社会の実現を目指すという点で、目標は同じです。多種多様な問題を抱える社会を、より良い方向に導くために、解決策を見出すことは、容易ではありません。地味ではありますが、客観的な証拠・論拠を基にした丁寧な分析による知識の積み重ねが不可欠です。社会科学の研究者は、社会を良くするために必要な知識の蓄積に、日々取り組んでいます。この冊子での研究紹介が、社会科学に興味を抱いてもらうきっかけになることを、祈っています。信州大学経法学部長広 瀬 純 夫

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