新しいブック
15/28

研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例主な研究事例 労働経済学と呼ばれる分野を専門としています。労働経済学では労働市場で起こる様々な現象や、それに伴う周辺問題を広く取り扱います。賃金や労働時間はどの様にして決定するか、政府の行う労働政策がどの様な影響を及ぼすか、と言った問いに対して仮説を立て、データを用いることで検証を行います。 これらの仮説を正しく検証するためには、目的に応じたデータを収集し、データに応じた適切な分析を行う必要があります。世の中にどの様なデータが存在し、仮説を検証するためにはどの様な活用方法が適切なのかを知る事で、一見しただけではすぐに分からない様な、データ間の複雑な因果関係が見えてきます。三上 亮 講師2017年に大阪大学院博士前期課程(経済学)を修了。その後、大阪大学社会経済研究所特任研究員を経て、2022年7月に信州大学経法学部に講師として着任。 私の専門の「計量経済学」と呼ばれる分野は、ミクロ経済学やマクロ経済学の経済理論と統計学の境界分野で、理論の仮定・結果などを現実の経済データ(GDP、金利、株価など)を用いて分析・評価することを主たる関心としています。計量経済学の分野の中で、私の研究対象は時間に依存するデータ (時系列データ)です。例えば、ニュースで見かける求人倍率・失業率は時系列データに含まれ、日々多くの時系列データに囲まれていることがわかります。私の研究は経済データから「どのような意味を?」、「どこまで引き出すことが出来るか?」に関心があり、この問題を解き明かすための統計理論の開発・研究を行っています。 矢部 竜太 准教授一橋大学大学院経済学研究科(経済学博士)、日本学術振興会特別研究員PDを経て現職。 近年のIT技術の進歩に伴い、分析者の工夫次第で、従来では利用が困難であったデータを活用できる機会が飛躍的に増加しています。例えばwebスクレイピングやAPIと呼ばれる技術によって、インターネット上に存在する膨大な情報に対して、容易にアクセスすることが可能になりました。これまで検証が困難だと思われていた諸問題への解決手段として、新たな情報(データ)への期待が非常に高まっています。 一方で、経済学的な知見に加え、統計学の知識がなければ得られたデータから因果関係を正しく識別する事はできません。データの種類や構造自体が急速に複雑化する中で、これらを自ら収集し、分析まで行える能力を持つ人材への需要が社会の各分野で増加し続けると考えられます。講義では大きく分けて「仮説を設定する」、「データを入手する」、「得られたデータに対して統計的処理を行う」という、 3つの能力を身につけます。 近年、経済データなどのエビデンスに基づいた議論を展開することが推奨されています。思い込みなどの主観的な判断を回避するために歓迎されるべき方向性だと思います。しかし、統計理論はデータにより得られる知見には限界があることも示しています。(例えば、右のグラフのように、ゲーム内に出現するデータを考えてみれば、データを生み出すプログラムが存在することはゲームなので自明ですが、どのようなプログラムなのか観測されたデータからわかることには理論上限界があります。) 個人的には、データの分析結果に振り回されることなく、データとのある程度適切な距離感・付き合い方を少しでも提案出来ればよいかと思っています。  卒業後に関してですが、データ分析能力を持った人に対する需要は多いのに対して、確率論・統計理論の習得が難しいせいか満足に人材を育成出来ていないように思われます。このような状況ですので、確率論・統計理論をしっかり学んだ学生に対しては民間部門・官公庁での様々な分野での活躍の場があるように思います。14経済学のイメージ労働経済学では何を行うか1. 我が国の基幹統計データを利用した婚姻行動に関する実証分析。2. オンライン上でのweb実験データを利用した、探索行動に関する研究。3.経済実験データを用いた入札行動に関する研究。ソーシャルゲームに登場するキャラクターの重さと高さをプロットしたものです。データの背後に右上がりの直線関係があることがわかります。 GDPや金利などの経済時系列データに応用可能な確率理論の研究を行っています。特に、データ分析を行う前にモデルの構造に関する情報を極力仮定しないノンパラメトリック統計理論に関心があります。 また、近年では莫大な数のデータを扱う高次元統計理論・ビッグデータ解析に関する研究も行っています。応用経済学科応用経済学科世の中に存在する様々なデータを活用するデータとの付き合い方をゆっくりじっくり考えています

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る