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BADC研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例主な研究事例【ゼミ生の主な研究成果】 戦後日本の政府・産業・企業を対象に、歴史的なアプローチから成長や発展のメカニズムを研究しています。具体的には、高度成長期の花形産業であった石油化学工業を事例に、産業政策や技術革新が企業行動に与える影響を分析してきました。 また、構造不況あるいは低成長に陥った産業や企業の活性化策として、事業構造の転換戦略の研究も進めています。事業構造の転換とは、たとえば合成ゴムを主に生産していた企業が最先端の半導体材料の有力メーカーに変貌する、といった意味です。産業や企業の構造転換を考える上では、右図に示したコア・コンピタンス(中核能力)が重要な鍵になります。橋本 規之 准教授早稲田大学商学部卒業。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。東京大学ものづくり経営研究センター特任助手、信州大学大学院経済・社会政策科学研究科講師、准教授を経て、現職。 経済学では、ルールや制度の設計の違いによって、人々の行動がどのように変化するかを考えることが、大きな研究テーマの一つです。たとえば、飲酒運転による悲惨な事故が社会的に問題視され、罰則強化が行われて重い罪が科されるようになりました。それでも、飲酒運転による事故は無くなっていません。罰を重くすることだけが、解決策ではなさそうです。実は、ルールを守る傾向には、人々が持つ様々な性質が関係していることが、少しずつ、分かってきています。ルールを守る傾向が明らかになれば、人々がルールに従うような法制度をデザインするための重要な手掛かりになってきます。私の主な研究対象は、金融市場での企業の行動ですが、最近は身近なトピックスとして、道路交通法改正の影響について、大学生と一緒に研究を進めています。指導しているゼミの学生は、自動車の後席シートベルトの着用率の傾向と、任意自動車保険の加入行動との関係を分析して、行動経済学会の論文コンテストで、優秀賞を受賞しました。広瀬 純夫 教授2004年3月:東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学:東京大学)2004年、信州大学経済学部講師、2009年、同准教授を経て、2014年、信州大学学術研究院社会科学系教授。 スマートフォンの部品材料など高度なIT社会を支える機能素材を提供している日本の化学産業は、今や新たな成長産業であり、今後も多面的な分析が求められます。 成長産業化した背後には、個々の企業の事業構造の転換戦略があると考えられます。鍵となるコア・コンピタンスを形成・蓄積するにはある程度の時間が必要です。一連の過程を時間軸に沿って、事実に基づいて把握する歴史的アプローチの有効性が期待されます。 経法学部では、3つの講義とゼミを担当しています。組織を機能させるマネジメントを学ぶ「経営組織論」。画期的な事業の仕組みを理解する「ビジネス・システム論」。イノベーション(革新、既存資源の新結合)の歴史から思考の糧を得る「経営史」。そしてイノベーションとビジネス・システム(経営資源から価値を生み出す仕掛けと活動体系)を実践的に考えるゼミ。これらの授業を通じて培われた広い視野で物事に創造的に取組む力はコア・コンピタンスとして社会で活用できるはずです。 広瀬ゼミでは、様々な社会問題をテーマとして取り上げて、経済学の考え方を応用しながら原因や影響を考えた上で、その考えの妥当性を、データを用いた分析で検証します。「甲子園出場校の勝つ確率は、地元で雪が降る日が多いほど低くなる」という研究成果が、懸賞論文で入賞するなど、大学生ならではのユニークな分析を行っています。また、経済学的分析の面白さを伝えるため、高校生を対象に、「法律が変われば人々の行動は変わるのか?Excelで体験する経済学のデータ分析」という、データサイエンス入門の体験プログラムも実施しています。2020年8月に開催したプログラムでは、飲酒運転の罰則を強化した影響を確認するなど、データを用いて客観的に社会現象を捉えることの大切さを体験してもらいました。「ひらめき☆ときめきサイエンス〜ようこそ大学の研究室へ〜KAKENHI」では、Excelを使って、高校生に、データサイエンス入門を体験してもらいました。 「反転のイノベーション戦略」という論文では、視点を反転させるという切り口で、幅広い業種・企業の革新の事例を扱っています。「炭鉱から観光へ」と事業構造の転換に成功した常磐炭礦(現・常磐興産)のスパリゾートハワイアンズ事業は代表的です。コア・コンピタンスは、自前の教育機関である常磐音楽舞踊学院で育成されてきたフラダンサーたちです。創業期の彼女たちの奮闘を描いた映画のヒットを受けて、「フラガール」の呼称が誕生しました。10コア・コンピタンスとは、顧客(広義には社会)に対して、他社には真似できない、自社独自の価値を提供するための中核能力行動経済学会 第3回学生論文コンテストで優秀賞を受賞した室田誠さんと齋藤祐也さん。室田誠・齋藤祐也「罰則の有無による行動の違いと保険加入行動との関係」 2019年度 行動経済学会 第3回学生論文コンテスト・学部学生部門 優秀賞兎本國弘「少子化問題解決の手段としての労働時間短縮・効率的労働」2017年度 日本統計協会懸賞統計論文・学生の部・審査員奨励賞 中林健「私立高校の入学者確保の手段としての甲子園出場:都道府県別の甲子園大会勝率に関する分析を通じての考察」2015年度 日本統計協会懸賞統計論文・学生の部・優秀賞、2014年度 信州大学経済学部ゼミ合同発表会・最優秀賞赤沼喜生・今枝翔馬「Yahoo!のEコマース無料化の影響」2013年度 信州大学経済学部ゼミ合同発表会・優秀賞䠏䠟䛾ᯟ⤌䜏䛷ᤊ䛘䛯䝁䜰䞉䝁䞁䝢䝍䞁䝇㢳ᐈ䠄䠟ƵƐƚŽŵĞƌ䠅㢳ᐈ౯್䠄䠟ŽŵƉĂŶLJ䠅➇ྜ௻ᴗ䠄䠟ŽŵƉĞƚŝƚŽƌ䠅ᕪู໬⮬♫応用経済学科応用経済学科社会をよりよくするイノベーションを生み出す事業と組織の仕組みを考える法律は、人々の行動を、どう変えるのか?ルールや制度の設計について考えてみる

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