人文学部研究紹介2024-2025
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信州大学人文学部長学部長あいさつ 『論語』雍也篇に、「子曰、知之者不如好之者、好之者不如樂之者」とあります。この孔子の言葉を直訳すると、「知ることは好むことに及ばない。好むことは楽しむことに及ばない」となりますが、これは何も「知る」ことや「好む」ことを否定しているわけではありません。朱熹という思想家は、この一節を、孔子が「道理」との関わり方について述べたものだと捉え、次のように解釈しました。――そもそも「道理」を「知る」人は少ない。「好む」ことは「知る」ことの極みであり、「道理」の愛し求めるべきことを明らかに知っていて、心からそれを好んでいる状態である。「楽しむ」ことは「好む」ことの極みであり、「道理」が既に身についた段階である。天地万物の道理がわが身に具足しているのだから、これ以上「楽しい」ことはないだろう。穀物を例に取れば、その穀物が食べられるものだと理解することが「知る」、実際に食べてみてどういう味なのかが分かっている段階が「好む」、満腹になるまでそれを食べることが「楽しむ」だ、と。―― 人文学部に所属する研究者たちは一体、何を「知」り、「好」み、「楽」しんでいるのか。この研究冊子は、その「報告集」と呼べるものなのですが、実はそれにとどまりません。この研究冊子で人文学の世界を垣間見たあなたに向けて、この世界を共に「知」り「好」み「楽」しみませんか、と誘惑してもいるのです。それぞれ嗜好や体質がありますので、口に合うかどうか、食あたりしないかどうかはご自身で確認していただくしかありませんが、これを読んで、人文学という穀物を食べてみたいと思ったかた、口に入れて「おいしい」と感じたかたは、さらに次の段階にお進みください。私たちと共に、人文学を「知」り、「好」み、「楽」しもうではありませんか。早坂■俊廣「知る」こと、「好む」こと、「楽しむ」こと

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