繊維学部研究紹介2023 日本語版
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44応用生物科学科応用生物科学科教員紹介植物は周囲とのコミュニケーションのためにさまざまな物質を作り出しますが、それが、人にとっては薬となったり、いい香りだったりと、体に良い効能がいろいろあります。現在研究室で研究を進めている、植物が身を守るため有害な物質を無毒化する機能は、逆に環境浄化などにも使うことができます。こういった植物が持つチカラを研究し解明することで、私たちの生活に応用できることがたくさんあるのです。田口悟朗教授信州大学繊維学部や信州大学遺伝子実験施設で助手を務めた後、2019年より現職。研究分野は、植物の有用物質生産に関わる酵素反応や遺伝子解析、その有効活用を図るといった応用生物化学。人や環境に有益な研究は幅広くニーズがあり、主に食品関連への就職が多い田口研究室。その他にも分析関連の業務を行う会社や、薬品関連、農業関連への就職も少なくありません。高校の先生として活躍している卒業生もいます。教員紹介夢のような作物の例として、花粉症に効果のあるお米や、自分で殺虫剤を作って身を守るトウモロコシがもう出来ています。将来は、環境に広がってしまった毒物を吸収して集める草や、電気を使わずに光る街路樹、マンガのように一本の木にチョコ風味やバニラ風味でバナナやリンゴやメロンのような実を代わるがわる作らせることさえも、理論的には可能です。林田信明教授名古屋大学大学院卒、理化学研究所勤務の後、信州大学で専任助教授として遺伝子実験施設の立ち上げに携わり、2009年より現職。研究分野は植物分子育種学。卒業生の多くは、食品・医薬品のメーカーや流通などのバイオ関連企業に勤めて、研究・開発や品質管理・流通管理などの職種で、ここで学んだ専門知識を生かしています。教授がイベント好きなせいか、総務へ行った学生も。研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像抗酸化物質を含む身近なワサビの葉からDNAを抽出植物の能力の最たるものは光合成だが、白い部分はその能力を失っている。その原因を探る事が、光合成そのものの理解につながるハクサイとカブはまるで似ていないが、互いに交配が可能な単一の「種」である。これほど形が異なる原因を解き明かせば、他の作物の形も同じように変えられるだろうサイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cm桑の葉には、血糖値を下げるのに有効な成分が含まれている。その成分ができる仕組みについて解析をすすめているサイズW3.6cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦22.2cmサイズW3.6cm×H4.35cm配置位置横14.9cm、縦22.2cm抽出した植物の遺伝子の塩基配列をパソコンで解析する植物の持つさまざまな機能について研究している田口研究室。例えば、植物は作った物質に糖をつけて細胞の中に貯め、必要なときに糖を外して使う機能があります。この機能を、薬などの物質の加工に応用できないかと考えています。水に溶けにくい物質に植物の酵素を使って糖をつけ、水に溶けやすくしたり安定性を高めたりすることが可能になるのです。その他、私たちの健康に役立つ植物成分がどのように作られているのかを調べています。植物の機能を科学的に追究することで、私たちの快適な毎日につながっていきます。食べるとアレルギーが治る野菜や温暖化でも平気なお米、宇宙船の中でも簡単に育つ果物ができたらどうでしょう?植物が持っている能力を最大限に引き出せば、そんな作物も創れます。植物の遺伝子資源を活用して品種改良を行うのです。昔は何百年もかかりましたが、最新の遺伝子技術を用いれば短期間で計画通りの作物を作り出す事が可能になります。ただし、そのためには植物の遺伝子を詳しく理解しなければなりません。そこで、食物繊維などの栄養分や、病気にかからないなどの育てやすさ、姿・形を制御する遺伝子の研究を行っています。知られざる植物のチカラ。暮らしを豊かにするその能力とは?グリーンイノベーションで新しい植物を創り出す

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