繊維学部研究紹介2023 日本語版
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579●0℃36超臨界水と高温高圧水とは超臨界水固体液体0.1MPa(大気圧)気体100℃374℃温度水の持つ機能を最大限発揮するために温度、圧力を操作した新たな化学反応場を探求しています未利用水産残渣のナノファイバー化頭痛薬と知られるアセチルサリチル酸(アスピリン)を原料に、分解・再合成による資源循環(ケミカルリサイクル)が容易なプラスチックを開発。資源循環を目的に設計されたビニルポリマー(炭素-炭素結合で連結された高分子)としては、世界初の例です。粉砕したアンモニア水ポリエステルに浸漬希アンモニア水で分解する高分子。分解すると、原料の色素が再生して溶液が黄色く呈色する超臨界流体臨界点水の物性の温度依存性圧力24MPa1125200400温度[oC]600常温常圧では水の中性はpH=7ですが、温度とともに中性のpHは水だけでも変化します高温高圧水処理農林水産残渣・高付加価値な機能性材料バイオマスリグニン(木材)フェノール化合物タンパク質コラーゲンペプチド(魚鱗)βグルカン(キノコ)βグルカンオリゴ糖キチン(カニ、キノコ)キチンオリゴ糖22.1 MPa圧力pHpOH農林水産残渣からの高付加価値材料づくり分解して原料再生化学・材料学科化学・材料学科教員紹介化学というと色々な薬品を使うイメージがあるかもしれませんが、それを環境に優しい“水”に置き換えることが私たちの目的です。水は、1気圧では、100℃で沸騰しますが、圧力をかけると100℃以上でも液体状態を保ちます。温度、圧力を操作することで水の物性(pHなど)もコントロールできます。つまり、酸・アルカリを使わなくてもpHが変えられます。この“水”を使って、薬品をできるだけ使わずに、様々な化学製品を作る方法を実現します。長田光正准教授東北大学で博士号を取得後産総研の研究員、ミシガン大学在外研究員、一関高専の准教授を経て、2014年から現職。専門は、化学工学、超臨界流体工学、バイオマス変換工学大学で学んだことを活かして、化学・食品・医薬品メーカーなどで、世界を舞台に技術者・研究者として活躍することを期待しています。技術的な視点だけではなく、社会的・文化的な背景も考えられる力をもつことも重要です。教員紹介高分子化学は産業と密接に関わっているため、研究室で開発した新物質が、工業製品として実用化されることもあります。研究室では純粋な化学実験を学生とワクワクしながら進める毎日ですが、同時に研究成果をもとにした応用研究を国内外の企業・研究機関と進めています。省エネルギー、循環型のプラスチック生産技術や、自己修復材料、pHや温度に応じて性質が変化するインテリジェント材料など、幅広い研究を展開中です。髙坂泰弘准教授1984年東京生まれ。2011年に東京工業大学で博士号を取得し、大阪大学助教を経て2019年から現職。2022年、JSTさきがけ研究員兼任。2023年、信州大学RisingStar教員に認定、文部科学大臣若手科学者賞受賞。卒業生全員が大学院修士課程へ進学し、高分子化学・有機化学の研究者・技術者を目指しています。さらに博士課程に進学して、国際社会で通用する、第一線の研究者を目指す学生もいます。卒業生は化学・材料関係の大手企業に就職し、活躍しています。研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像長田研究室では、『超臨界水(高温高圧水)』や『ウォータージェット(マッハ2以上に加速された水)』というちょっと変わった『水』を用いた化学の研究を行っています。自然界では『水』がもつ能力を活かして、日々いろいろな物質が作られています。自然から学ぶことで『水』の機能を最大限引き出し、環境に優しい化学が実現できると考えています。この『水』を使って、有効利用されずに捨てられている農林水産残渣などの地域資源バイオマスから付加価値の高い機能性材料(食品や医薬品)を創っています。例えば、イカ中骨に含まれるキチンからナノファイバーをウォータージェットで作っています。繊維、プラスチック、ゴム…私たちの日常生活は,高分子材料なしには成立しません。一方で、廃棄されたプラスチックによる海洋汚染や、石油資源の将来的な枯渇など、現代の高分子化学が引き起こした社会問題も存在します。高坂研究室では、原料となる分子から高分子を設計し直し、これらの問題を解決する新しい高分子材料の開発しています。例えば、水中で環境負荷の小さな物質に分解する高分子や、原料を再生する循環型のプラスチックを開発しました。また、従来のポリエステルが高温・真空下で合成されるのに対し、低温・常圧での合成を実現する新しい合成法を発明しました。『水』の能力を活かしてバイオマスから機能性材料を創る世界を救う&変えるチャンス到来!分子設計が導くプラスチック革命!!

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