繊維学部研究紹介2023 日本語版
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15消費者が望む機能やデザインを持ち、さらに実際の購入につながる衣服は着心地がよく、美しさ、格好よさ、エレガントさ、高級感、かわいさなどの感性価値を持つ衣服だと思います。また、それは、美しくて、物性、機能に優れた衣服材料で作られています。研究室ではこのような美しくて快適な衣服を設計するための方法とは何か、また、そのような衣服のための衣服材料とは何かを、繊維工学、衣服学、感性工学的観点から明らかにする研究を行っております。体温に影響する環境側の要素には、気温だけでなく日光やコタツなどの熱放射、扇風機などの気流、湿度、衣服があります。特に衣服や気流は環境の温度を変えず、好みに合わせて暑さ寒さを調節できます。佐古井研究室では、衣服や気流を有効に活用していくため、身体からの熱・湿気輸送現象の測定、その装置開発や数値シミュレーション、それらを入力として身体の温度分布を予測する数値人体モデルの開発、身体を水の蒸発によって冷やす冷却服の開発、熱中症と衣服や気流の関係の解明などに取り組んでおります。先進繊維・感性工学科先進繊維・感性工学科教員紹介芯地を接着した布の物性を接着前の布と芯地の物性から予測する研究、ハイエンド衣服設計技術の分析,外観と着心地に影響する衣服材料・パターン要素とその条件、縫製・アイロン処理による衣服の立体化のメカニズムの研究など、経験に頼ってきた衣服製作方法の原理を明らかにし、工学的体系化を目指した研究を行っています。最終的には美しくて快適な衣服の効率的な設計方法を提案し、消費者が好み・購入する服の生産を目指す産業界の役に立ちたいと思います。金炅屋准教授日本学術振興会特別研究員(DC2・PD)を経て2019年より現職。専門分野は衣服工学・繊維工学・感性工学。主な研究分野は衣服材料・衣服設計・評価に関する研究。衣服材料、衣服設計・デザインに関する専門知識だけではなく、俯瞰的な視野、コミュニケーション能力を持ちグローバル化への対応が可能な人材を目指して指導しています。教員紹介物理的には「熱・湿気輸送」の解明、生理・心理的には「体温や汗と暑さ寒さの対応」の解明に取り組んでおります。部屋全体を暖める、冷やすといったこれまでの暖冷房は、多くのエネルギーを消費してしまいます。衣服や気流により、個々人の周りのみにおいて好みにあう微気候を形成できれば、夏冬のエネルギー需要を無理なく抑制でき、エネルギー不足の解決に繋がります。また、気温が同じでも、湿度や着衣、気流、日射などによって熱中症リスクも異なります。衣服や着衣などを活用し、エネルギー消費を抑制しつつ、良好で安全な居住環境を実現していきます。佐古井智紀准教授東京大学生産技術研究所、産業技術総合研究所、信州大学国際若手研究者育成拠点助教、講師を経て、2015年より現職。温熱環境評価や温熱生理反応解析で、3件の空気調和・衛生工学会賞などを受賞。研究分野は温熱環境工学。これまでの卒業生は住宅メーカーや保険会社の大手に就職。研究室では、与えられた研究課題を行うというよりむしろ、社会へ出る準備として、未知の研究課題への取組み、特に考えて工夫することを通じて、自分で考えて行動できる自主性を養うことに重点が置かれている。感性工学コース感性工学コース研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像気流、気温、熱放射、それぞれ効果を測定する装置の開発3Dシミュレーション衣服プロポーションを考慮した衣服設計ひずみ計測による着心地評価水分蒸発による冷却を利用した冷却衣服の実験風景。温度が高く風だけでは快適にならない環境でも十分な冷却効果が得られるシミュレーションにより、気温分布や体温分布などを予測写真サイズ高さ4.35cm×幅3.6cm配置位置横15.3cm、縦2.85cmテキスタイル・衣服パターン・製作技術の関係から探る美しくて快適な衣服。暑さ・寒さと熱の科学。衣服や気流を活かして好みの熱環境を

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