繊維学部研究紹介2023 日本語版
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14毎日授業中に座る椅子、毎日履いているシューズ。普段何となく、この椅子は座りやすい、このシューズは履きやすい、など色々なことを感じていると思います。では、どの程度心地良いのでしょうか?私たちは目に見えない心地を可視化し、心地を科学しています。脳波・心電図・筋電図といった生理的活動の計測や、行動・気持ちの変化の測定だけでなく、さらにはコンピュータシミュレーションも取り入れながら心地や感性を理解することによって、人間が良いと感じるモノを創っていこうとしています。現在では、目に見えてわかりやすい人類の役に立ちそうな(≒経済を動かす)研究が重宝されています。たとえば、短期間で何キロも痩せるダイエット法の開発などは、科学的エビデンスの有無に関わらず必ず注目を浴びます。一方で、我が研究室では、何の役に立つかわからないかもしれないが「こんなに面白いヒト生体の機能、どうなっているの??」という知的好奇心と科学的エビデンスに基づいて、国際級の研究を進める方針です。特に、ヒトの身体運動の神経制御機能の解明に取り組んでいます。吉田宏昭教授デジタルヒューマン研究センター研究員、信州大学繊維学部助教等を経て、2019年より現職。研究分野は、感性工学、バイオメカニクスなど。コンピュータシミュレーションを用いた心地評価などを行っている。吉武康栄教授大阪市立大学工学部(学部)、京都大学大学院人間・環境学研究科(大学院)出身。学術振興会特別研究員PDなどを経て2018年9月より現職。日常生活活動からスポーツ動作中の不思議な現象や制御機能に興味を持つ。先進繊維・感性工学科先進繊維・感性工学科教員紹介コンピュータシミュレーションは身体内部の状態を解析でき、人間の感覚を推定できる方法です。このシミュレーションの一番の利点は身体内部の状態を可視化できることです。例えば、身長や足長などの身体情報を入力すれば、座席シートやシューズがその人に合っているかどうか、その場で表示できます。将来的には、コンピュータ上で、座り心地・履き心地・寝心地・触り心地などを評価したいと思っています。感性工学コースの学生は、ものづくりに対する意欲が強いので、自動車や鉄道関連などの製造業に進む卒業生が多いです。さらに、「感性工学」という他にはない観点で、ものごとを見つめることができるのが大きな強みだと感じています。教員紹介スポーツアスリートが海外でも活躍を渇望するように、研究者も世界を相手に戦うことができます。論文が日本語や(たとえば)フランス語で書かれていても、日本人かフランス人しか読みません。英語で研究をすれば、世界中の研究者とコミュニケーションを取ることになります。ヒト生体の研究を通じて、世界を感じることができると思います。世界基準での研究の仕方を学んだ後は、あなた次第。感性工学コース感性工学コース研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像研究課題(1) 効率的に(素早く・大きく・筋疲労が少なく)力を発揮する生理学的メカニズム(2) 精確に力を調節する生理学的メカニズム(3) 効果的な運動学習機能上記について、ヒトの筋レベルおよび筋線維(運動単位)レベルでの筋電図測定を中心に、最近では脳機能測定(経頭蓋磁気刺激法,脳波)や画像診断法(超音波Bモード、エラストグラフィ)も加えて、統合的に解明を試みる。座席に着座したときの気持ちの変化をアンケートを用いて調べ、その変化が身体内部でどのように現れているのか解析しています歩行動作をビデオなどで撮影し、その動きをコンピュータシミュレーションで再現して、身体内部の現象を解明しています吉武研究室が取り組む各種研究テーマの測定風景左上:走パフォーマンスの規定因子右上:運動中の大脳興奮様相左下:力制御機能下中:スポーツ動作中に発現する不随意的動作右下:筋・腱の振る舞い写真サイズ高さ4.35cm×幅7.5cm配置位置横11.4cm、縦2.85cm感性とシミュレーションの融合筋(線維)パフォーマンスに関する研究をしていますそれは、新たなモノづくりの形

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