繊維学部研究紹介2023 日本語版
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13現在、限りある資源である石油から作られる合成高分子は、人間生活に欠かせない物質となっていますが、焼却や廃棄による環境汚染など多くの問題を抱えています。そこで、地球環境と人間社会の共存・共栄のために、再生可能で生物由来の有機物資源から得られる環境循環型高分子の開発が進められています。田中研究室では、再生可能資源である糖や植物油などを原料とした『バイオマスプラスチック』、環境中の微生物の作用により分解される『生分解性プラスチック』を用いて、『人間』と『環境』に対して無害で安全に使用できる材料開発に取り組んでいます。これからの未来は過去の延長からは想像もできないことが次々に起ころうとしています。 そんな未来を技術からではなく、多様な未来社会を想定しながら学生と一緒に人を中心としたアイデア創出と提案をしています。 ちょっと変なことを考える個人の独創力が、新たなイノベーションにつながっていきます。田中稔久教授科学技術振興事業団戦略的基礎研究推進事業や独立行政法人理化学研究所の博士研究員を経て、2020年より現職。研究分野は天然・水溶性・生分解性高分子などの材料物性・構造解析など。長尾幸郎教授三菱電機デザイン研究所にて、プロダクトデザインからビジネスデザインまで多様なデザインに従事。東京工業大学大学院で技術経営専門職学位取得、22年1月信州大学に着任。先進繊維・感性工学科先進繊維・感性工学科教員紹介卒業生の進路は多岐に渡っており、材料開発を行っている素材・製造メーカーだけでなく、繊維メーカーを中心に様々な業種に就職しています。社会的に関心が高い研究分野であることから様々な業界へ進む可能性が広がっています。教員紹介エビデンスベースで様々な事象を探索しながら新たな機会領域に着目し、未来のビジョンをビジュアル化して示します。また、デザイン領域を俯瞰的に捉える手段として、ネットワーク分析も行っています。デザイン領域はプロダクトデザインだけではなく、UXデザイン、ビジネスデザイン等へ大きく拡大しています。モノづくりのメーカーだけではなく多くの業種でデザインの価値を経営に活かそうとしています。先輩がいる企業だけではなく、新たな活路を切り開く人材の育成を目指しています。感性工学コース感性工学コース研究から広がる未来田中研究室では、人間の体内でも分解するような物質やバイオマスから作製した様々な材料を使って、生体(人間)に対して適合性を持つ医療用材料(縫合材料、細胞を増殖させるシート、創傷保護材)、健康・介護用品(化粧品用パックシート、フィルター)などの開発を目指しています。さらに海水を淡水に変えるシート、乾燥地用緑化シートなどの開発から、資源やゴミ問題などの環境問題の解決に役立つ材料開発を目指しています。卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像無数のミクロポアを有する生分解性高分子の高強度繊維を作製し、水溶性高分子を添加することで複合繊維材料を開発している■転職者支援の新しい提案■未来事象の蓄積乾燥地用緑化のために種子が発芽し成長するような水溶性高分子ゲルシートを作製し、その微細構造を電子顕微鏡を用いて解析する■在宅勤務単身者に向けた■強制発想によるアイデア展開新たな暮らし方の提案機会領域創出アイデア展開■22年度卒業研究より『人間』と『環境』に無害で安全に使用可能な材料開発を目指して!ミッションは“未来の創造”-環境変化を掴み、自分をみつめ、提案へ繋げる-未来探索

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