07たなかなおき凍り豆腐は豆腐を凍結し、低保存食品。乾燥状態は硬いで煮込むと大変美味しい。日本でメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が問題視されて久しいですが、未だに40歳から74歳では、男性の2人に1人、女性の5人に1人が、その該当者あるいは予備軍と推定されています。メタボリックシンドロームは、心臓病や脳卒中、糖尿病、肝癌・肝硬変、腎不全といった重篤な病気のリスクが高まるため、我が国において特に対処が求められることは言うまでもありません。今回、信州の伝統食である「凍り豆腐」(高野豆腐、凍(し)み豆腐とも言う)を食することが、メタボリックシンドロームにつながる肥満や脂肪肝の予防に効果があることが分かりました。その研究を行ったのは、食・生活習慣病の専門医師である信州大学学術研究院(医学系)田中直樹教授の研究チームと、飯田市に本店を置く食品メーカー旭松食品株式会社の研究開発本部研究所・石黒貴寛副主任研究員のグループ。2020年から実施している両者の共同研究により、今回の研究成果につながりました。もともと、旭松食品は凍り豆腐に多く含まれる、消化されにくいタンパク質である「レジスタントプロテイン」が、生活習慣病予防につながることを解明する研究を独自に行っていましたが、さらに生活習慣病からの視点や学術的なエビデンスを得て研究を深めようと、田中教授との共同研究に踏み出しました。信州大学学術研究院(医学系)食・生活習慣病の専門医師と信州伝統食研究者のコラボ豆腐を凍結、低温熟成してつくる「凍り豆腐」は、冬場の寒冷地の特性を生かした信州の伝統食であり、長野県の生産量は全国の9割以上を誇ります。この凍り豆腐を食べることで肥満や脂肪肝の予防に効果があることが、信州大学学術研究院(医学系)の田中直樹教授の研究チームと旭松食品(本店・長野県飯田市/本社・大阪市)との共同研究で分かりました。昔から親しまれている信州の伝統食に対して、信州大学と食品産業が連携し、最新の学術研究で“健康”という観点から光を当てて、その魅力を再発掘する―。そんな取り組みをご紹介(文・佐々木 政史)します。凍り豆腐の難消化性タンパク質がどうも“痩せ”に機能しているようだ…今回、田中研究室と石黒副主任研究員のグループは、通常食(通常、マウスに与える■)、高脂肪食、高脂肪食に凍り豆腐を加えたもの、高脂肪食に凍り豆腐から抽出したレジスタントプロテインを加えたものをマウスに4カ月間与えました。高脂肪食を与えた群は、通常食に比べて体重が平均10グラム多くなりました。一方、凍り豆腐やレジスタントプロテインを高脂肪食に加えたところ、通常食に比べて平均6グラムの体重増加にとどまりました。また、マウスの脂肪組織の重量や、肝臓の中性脂肪の量、脂肪細胞の肥大量、脂肪組織田中 直樹教授信大の“医農産連携”… 信州の伝統食「肥満、 脂肪肝の
元のページ ../index.html#8