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のひとつです。「A-SEEDS(エーシーズ)」です。同療法の基礎研究から臨床実装に向けた研究開発を行っています。特に注力しているのが、「固形がん」での取り組みです。現在、CAR-T細胞療法の臨床応用は白血病や悪性リンパ腫といった「血液系がん」に限られており、肉腫などの固形がんではまだ実用化されていません。A-SEEDSはこの固形がんでの実用化へ向けて取り組んでおり、実現すれば世界初となることから、大きな注目を浴びています。もう一つ、CAR-T細胞療法の“独自性”という観点からも、A-SEEDSは注目されています。信州大学医学部小児医学教室・中沢洋三教授が開発した、アオムシ由来の「酵素」を使用するピギーバックトランスポゾン(PB)法を採用することで、製造コストを従来のなんと約10分の1に圧縮することに成功。また、PB法は分化や免疫疲弊を起こしづらいことも分かっており、より質の良いCAR-T細胞を製造できるというこのCAR-T細胞療法の推進で大きな注目を集めているのが、信州大学発のバイオベンチャー企業(文・佐々木 政史)観点からも注目を浴びています。した。そのなかで、ある課題感を持ち始めました。それは、CAR-T細CAR-T細胞の製造風景。  株式会社 A-SEEDS研究員臨床検査技師07(わしざわ もえ)多くの難治性がん患者さんのために、少しでも早くCAR-T細胞を届けたい!信州大学発のバイオベンチャー「A-SEEDS」の固い決意と飽くなき情熱。外科、化学、放射線療法に続く新たながん治療法として、期待が高まる免疫療法。中でも注目を集めているのが、信州大学発で最先端の「CAR-T細胞療法(※)」です。信州大学発のバイオベンチャー企業「A-SEEDS(エーシーズ)」(松本市・柳生茂希 代表取締役社長)は、このCAR-T細胞療法を製品化するため、基礎研究から臨床実装に向けた研究開発を行っています。基本的にオーダーメイドの療法であるため製薬会社による量産化が難しいという高いハードルもありますが、少しでも早く、少しでも多くの難治性がん患者さんを救いたい―。その情熱がひしひしと伝わる現場に足を運びました。※非ウイルス遺伝子改変CAR-T細胞療法難治性がん治療の切り札に!世界初、“固形がん”に効くCAR-T細胞の実現へ手術・抗がん剤・放射線といった従来のがん治療では効果が見込めないー。こうした患者さんへの“切り札”として注目を集めている新療法があります。2019年に承認された「CAR-T(カーティー)細胞療法」です。これは患者さん自身の血液から採取した免疫細胞「T細胞」に、がんを認識する「CAR」を遺伝子導入技術を用いて組み込み、培養したうえで、それを薬として身体に投与する治療法で免疫療法米国で盟友と出会いベンチャー設立、“ビジネスとして成立”という高い壁に挑むA-SEEDSは設立から3年目を迎えますが、設立のきっかけは、盟友とも言える中沢洋三教授と柳生茂希社長との運命的な出会いでした。両氏は留学先の米国ベイラー医科大学で出会い、CAR-T細胞療法研究で意気投合。帰国後、柳生社長は京都府立医科大学に、中沢教授は信州大学に籍を置き連携して研究を進めま鷲澤 萌さん世界初、固形がんに効くCAR-T細胞の開発に挑

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