江頭 宏昌教授 〈山形大学 農学部 食料生命環境学科〉いるのが長野県。2006年度に認定制度を設け、来歴・食文化・品種特性の3項目で一定の基準を満たしたものを「信州の伝統野菜」として選定、2023年3月9日現在で、83種類を登録しています。伝統野菜の継承が今、危機に瀕しています。一般的な品種の野菜に比べて耐病性で劣り、収量・品質が不安定である品種が多いことから、生産者の高齢化に伴い、年を追うごとに生産量が落ちてきているのです。こうした実情に危機感を持ち、立ち上がったのが、信州大学と長野県ケーブルテレビ協議会です。両者は2021年から「信州の伝統野菜アーカイブスプロジェクト〜信州の伝統野菜の誇りと思いをつなぐ〜」と題し、信州の伝統野菜の作り方や松島 憲一教授 〈信州大学学術研究院(農学系)〉特徴、地域文化としての重要性などを映像に残す取り組みを行っています。信州大学の学術的知見と、地域に根付いたCATVのフットワークを活かしたプロジェクトです。これまで16本の映像コンテンツを制作しましたが、2022年度は新たに8本の新作を追加。3月9日に伊那ケーブルテレビジョンのスタジオをメイン会場に開催したリモートシンポジウムで、その内容を紹介しました。今回は、初回から解説者を務め、信州伝統野菜認定委員会座長である信州大学学術研究院(農学系)の松島憲一教授に加え、伝統野菜研究の第一人者であり全国の実情に詳しい山形大学 農学部 食料生命環境学科の江頭宏昌教授をゲストに迎え、これまで以上に深堀りした議論を行いました。iネット飯山のスタジオでは、「常盤ごぼう」を40年以上作り続けている常盤ごぼう部05映像新作8本を公開伝統野菜研究の“第一人者”が解説その土地の気候風土や文化と密接に関わり、味や形、香りなどにおいて、唯一無二の魅力と価値を持った“食の文化財”とも言える野菜―それが「伝統野菜」です。この継承に積極的に取り組んで県内CATVスタジオを中継でつなぎ生産者へインタビュー8本の新作は「八町きゅうり」(Goo light)、「佐久古太きゅうり」(佐久ケーブルテレビ)、「ひしの南蛮」(コミュニティテレビこもろ)、「大鹿とうがらし」(飯田ケーブルテレビ)、「常盤ごぼう」(iネット飯山)、「親田辛味だいこん」(飯田ケーブルテレビ)、「稲核菜(いねこきな)」(あづみ野テレビ)、「松本一本ねぎ」(テレビ松本ケーブルビジョン)。このうち、「常盤ごぼう」と「親田辛味だいこん」は、それぞれ動画を制作したテレビ局のスタジオと中継を結び、生産者へのインタビューを行いました。 信州大学×長野県ケーブルテレビ協議会全国の伝統野菜を知る強力ゲストを迎え、第3回シンポジウム開催2023年3月9日、信州大学と長野県ケーブルテレビ協議会は、連携協定に基づく事業「信州の伝統野菜アーカイブスプロジェクト〜信州の伝統野菜の誇りと思いをつなぐ〜」のリモートシンポジウム2023を開催しました。同シンポジウムは2021年から実施しているもので、今回は第3回目。同プロジェクトリーダーの信州大学学術研究院(農学系)の松島憲一教授に加え、全国の伝統野菜に精通される山形大学 農学部 食料生命環境学科の江頭宏昌教授を強力ゲストに迎え、全国を俯瞰した意見・情報交換の中で、信州伝統野菜の作り方や特徴、生産者の声などを映像で残すことの意義が改めて浮き彫りになりました。 (文・佐々木 政史)信州の伝統野菜の誇りと想いをつなぐ。
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