伊那谷の農村歌舞伎では有名な伊那市長谷中尾地区の伝統芸能「中尾歌舞伎」。写真は人気演目「弁慶」の一場面で、手前で演じる女形が平山さんだ。に、平山さんが得意とし情熱を注いだ、地域課題に鋭く深く切り込んだ番組は話題を呼びました。例えば、1961年に起こった三六災害の恐ろしさを地元被災者の証言を軸に伝える番組「伊那谷を襲った36災害〜50年を超えて語り継ぐ〜」(2011年)、地元の高齢養蚕農家への取材を通じ消えつつある養蚕文化を記録した「けーぶるにっぽん彩・JAPAN 蚕が紡ぐ純白」(2022年)は、いずれも地方の時代映像祭で選奨を受賞しています。平山さんが他と一線を画すのは、地域課題への取り組みがテレビ番組の企画・制作のみにとどまらないことです。地域課題に貢献できるシステム提案「ケーブルテレビで未来を暮らそう」を企画。「ケーブル・アワード2020」第13回ベストプロモーション大賞においてグランプリを受賞するなど高い評価を受けています。この事業は、CATVの回線を活用しテレビ画面を通じて、主に中山間地の住民を対象に、買い物支援、乗り合いタクシー、遠隔診療予約、見守りといった様々なライフサポートサービスを提供するもの。このうち買い物支援サービスは、CATVの加入者がテレビの専用画面で午前中に商品を選択し注文すると、地元のスーパーマーケットから夕方までにドローンも活用しながら自宅に商品が届けられます。注文操作は慣れ親しんだテレビを通じリモコン一つで可能。決済もCATVの利用料と一括して請求する仕組みとし、パソコンやスマートフォンなどのIT機器の操作が苦手な高齢者でも簡単に利用できるようにしました。2022年から実際に全国初となる新サービスが開始されました。江戸時代から続く地域の伝統文化、農村歌舞伎の役者としても熱演実は平山さん、伊那市の長谷中尾地区という中山間地域で継承され、市の無形民俗文化財に指定されている農村歌舞伎「中尾歌舞伎」の役者でもあります。CATVの取材をきっかけに、その素質を見込まれ保存会の会長にスカウトされたそうです。中尾歌舞伎は江戸時代(1767年)に旅芸人を通じてこの地域にもたらされ、貴重な娯楽として祭りなどで演じられるようになりました。太平洋戦争の際に一時消滅しましたが、1986年に地域の若者たちがお年寄りの指導を受けて復活上演し、中尾歌舞伎保存会の活動が開始しています。「中尾歌舞伎保存会の活動が私を伊「地域発でも全国に発信できる、賞を獲れる番組を作りたい」が平山さんの信条。そのコメントのとおり、伊那ケーブルテレビジョンは受賞歴の多い実績あるCATV局。あのギャラクシー賞受賞の賞状も並ぶ。那の人にしてくれた」平山さんはそう話します。出身は広島県であることから、どこか“よそ者”という引け目のようなものがありました。しかし、地域の人と一緒に伝統芸能の継承活動に取り組むなかで、ようやく地域人になれたと感じているそうです。地域に価値ある情報を伝えるため“賞を獲りに行ける制作集団”でありたい常に新しいことに挑戦し続ける平山さん。今後の目標を聞くと、「手話でニュースを伝えること」と話してくれました。どんな人にも等しく情報を伝えたい。そのような想いで2008年に専門家から手話を学ぶ番組を企画。この番組を通じ手話を覚えていきました。ただ、手話でニュースを伝えられるようになるためには、手話通訳者全国統一試験に合格し、「手話通訳者」の資格を取得する必要があります。そのため、今年から講座にも通い始めているそうです。 もう一つ、「伊那ケーブルテレビジョンが賞を獲りに行く集団であり続ける」ということも、平山さんは抱負に掲げます。あくまでも賞を獲ることが目的ではなく、そのような目的を持つことでスタッフも自分も磨かれていく。そして、それは結果的に地域に価値ある情報を伝えることにつながる―そのように考えています。地域愛に溢れる平山さん。伊那のこの地域でこれからもどんな活躍を見せてくれるのか。期待せずにはいられません。10培った志を胸に、社会で活躍する素敵な大人たちchapter.03地元メディアへ…信大同窓生の流儀
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