ol.8菌根菌は共生菌のため、かつては培養作業がとても難しいという課題がありましたが、信州大学をはじめとする研究機関の連携で純粋培養の研究が進み、「培地に脂肪酸を添加する」ことで効率よく純粋培養できるまでになりました。しかし、純粋培養の段階には至ったものの、菌根菌を「微生物資材」として製品化するためには課題が残っていました。それは冷蔵保存であり、これまでの純粋培養方法ではその「冷蔵保存後に胞子が発芽しない」という致命的な事実です。つまり、菌根菌を「微生物資材化」するためには、冷蔵保存しても、きちんと発芽する品質の安定化と量産化が必須であり、この農業現場で信州大学をはじめとする研究機関との連携で「培地に脂肪酸を添加する」ことで効率よく純粋培養が可能に。PROFILE2001年 東北大学大学院農学研究科環境修復生物工学専攻修了2002年 独立行政法人農業技術研究機構 特別研究員2004年 独立行政法人科学技術振興機構 研究員2006年 信州大学農学部准教授2023年より現職信州大学学術研究院(農学系)大学院総合医理工学系研究科(博士課程)生物・食料科学専攻総合理工学研究科(修士課程)農学専攻高いニーズのある課題を解決したのが、今回ご紹介する特許になります。した、菌根菌の資材化に関する特許です。アグリビジネス業界ではスタンダードである植物の根に共生する菌根菌。その代表格であるアーバスキュラー菌根菌は、土中のリンを吸収し作物に提供するため、化成肥料の削減に役立ち、環境面でもコスト面でも注目されています。これまで、純粋培養には成功したものの、資材化に必要な冷蔵保存を行うと胞子が発芽しないといった重要な問題が残っていました。今回、齋藤勝晴教授は、この菌根菌に「複数の脂肪酸をミックス添加する」ことで、胞子の発芽に成功、資材化のための最終課題もクリアしました。環境アグリビジネスに注目が集まっている今、SDGsの実現やコスト削減にもつながる「微生物資材化」が果たす意義は、非常に大きなものといえるでしょう。11「菌根菌」の純粋培養成功に続き資材化の最終課題に向き合う菌根菌の代表格アーバスキュラー菌根菌は、アブラナ科などを除くほとんどの作物の根に共生し、土中のリンを吸収して作物に提供します。そのため化成肥料の削減に役立ち、環境面でもコスト面でも、こうした微生物の資材化が注目されています。信州大学の研究シーズを技術移転する信州TLOとのコラボで制作した、特許技術「見える化」映像シリーズの第8弾。今回ご紹介するのは信州大学学術研究院(農学系)齋藤勝晴教授が開発齋藤 勝晴 教授きん こん きんV化成肥料を削減し環境面・コスト面で環境型アグリビジネスを牽引知る人ぞ知る「菌根菌」の微生物資材化を実現!
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