ね。そのあとはほぼ1年何もせず、運動から離れてしまう。結城先生がおっしゃったとおり、輪切りになっているのはよいことではないので、部活動を地域に移行して、地域で受け皿になって頂くことがすごく重要です。結城:私もそう思います。室伏:さらには大学にも部活動の指導に協力して頂きたいですね。小平さんと会うだけでもきっと一生の思い出になりますし、感受性が強い時期にトップアスリートに直接指導して頂くことは、未来のトップアスリートを育てることにつながると私は思います。子どもたちにはもっといろいろな体験をさせてあげたいです。小平:私も小学生のときに清水宏保選手を間近で見たという体験があり、それが「知るを愉しむ」ということを引き出してくれたと思います。宏保さんがまとっている空気感とか、ウォーミングアップのときにどんな意識で、何周回って、どこでスタートのチェックをするのか。ずーっと観察して、それが小学生時代の私のベースになっていました。室伏:よく見ていましたねえ。細かいところまで。やっぱり興味があったんですかね。小平:はい。もちろん自分の体でそれはできなかったので、自分に置き換えた場合にどうしたら早くスタートを切れるかと考えていました。父親と「こうやって構えたら速く滑れそうだからやってみる」というやりとりをしていましたし、自由な発想で想像していた時期がすごくよかったなと思います。──ご自身の名前がついた「NAO ice OVAL」のオープニングイベント(2022年11月23日)でも、子どもたちととても楽しそうに交流していました。小平:そうですね。子どもと接するときには、自由な発想を邪魔しないような学びを作れたらいいなと思っています。まだ多くを教わってきていない子どもたちに、すーっと新しい感覚が入ってきているのが間近で見られて、すごくよかったです。結城:選手にはいろんなタイプがあります。この選手はこう言えばすごく工夫しそうだなとか、この選手にはもうちょっと細かく言ってあげないと動けないなとか。外部の指導者に移行していく中で、子どもの心をくすぐるような体験がうまくできるといいなと思います。──そしてスポーツは生涯にわたってできるものですね。小平:まさにそうですね。私は現役を引退してからも、週に一度、早朝にスケートを滑っています。そこでは80歳を超えるおじいちゃんがいて、私たちのスケーティングを見ながら腕組みをして研究している(笑)。スケートもしっかりと生涯スポーツになり得ると思いました。室伏:素晴らしいですね。生涯を通して、体のコンディションを整えて、運動に親しめる環境をアスリートとともに作っていきたいです。──みなさん、貴重なお時間を頂きありがとうございました。08
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