MUMaYUKI sahiroROFUSHI Kojiスポーツ庁長官信州大学学術研究院(教育学系)教授室伏広治結城匡啓トップアスリートに直接指導を頂くことが︑未来のトップアスリートを育てることにつながる速く滑る︑高く飛ぶという技術も︑視点を変えるだけで︑より安全で快適に暮らせる手助けにSPECIAL TALK SESSION室伏:素晴らしいですね。私たちもスポーツを地域のまちづくりの中に取り入れ、まちを元気にしていこうと取り組んでいます。好事例には長官賞を授与させて頂いたり、あとはくじで引いたまちを訪れたり(笑)。小平:そうなんですか?室伏:昨年は抽選で選ばれた北海道北見市に行きました。カーリングの街ですね。ロコ・ソラーレの方々とも会いましたし、市内には北見工業大学もあるので、自治体と大学の連携などを見てきました。自治体という視点で見ると、競技スポーツと健康スポーツはどうしても分かれてしまいがちです。しかし、地域の健康増進のためには両方の知見が大切になります。ただ運動をするだけではなく、どういう目的でどのくらいすると効果的か。ケガや病気を防ぐためにスポーツ科学の知見を取り入れて、安全に目的をもって運動をする、そんなリテラシーを地域の中で高めながら、まちづくりにもっとスポーツを取り込んでいきたいです。結城:F1のマシンで培ったノウハウが一般大衆車に応用できるように、速く滑る、高く飛ぶという技術も、視点を変えるだけで、より安全で快適に暮らせる手助けになるかもしれませんね。室伏:そうですね。スポーツは競技から健康増進までとても幅広いですから、活躍したアスリートが地域に貢献していくのも重要ですね。これまでのさまざまな経験を活かして、スポーツ界、そして社会に恩返ししていく。そんな循環ができたらいいですね。──小平さんは地元でボランティアにも積極的に取り組んでいます。小平:金メダリストになったことで、実はす1997年筑波大学大学院体育科学研究科修了。博士(体育科学)。公益財団法人日本オリンピック委員会長野オリンピック特別コーチ、98年筑波大学体育科学系助手、99年信州大学教育学部講師、助教授を経て2009年教授。14年4月より学術研究院(教育学系)教授。1997年中京大学体育学部体育学科卒業。2004年アテネ五輪で金メダル。07年中京大学博士号取得(体育学)、14年東京医科歯科大学教授就任、14〜20年公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会スポーツディレクター。20年10月より現職。ごく生きづらさを感じていました。この先、豊かに生きられないんじゃないかと不安に思ったんですね。ちょうどそのころ、地元・長野県で台風による災害が起きました。被害を目の当たりにして、誰かの支えになりたいと思い、自分の意志でボランティアに参加しました。そうしたら、すーっと地域の中に入っていけたんですね。私も地域で暮らす一人でいて良いんだと。金メダリストだから特別な存在ではなく、地域に生きる一人として、たくさんの人とかかわりを持ちながら生きていきたい。ボランティアで行動できたことが、いまの人生の豊かさにつながっています。誰かに応援されるだけじゃなく、私自身も応援できる存在でありたいと思い、競技をやめても長野に還元していきたいと考えています。──地域における子どもとスポーツの関係はどうでしょうか。結城:指導者はみなわかっていると思いますが、中学、高校とどうしても輪切りになってしまいますよね。限られた3年間の中で、何か結果を出さなければいけない。しかも子どもたちは、まだ十分に体ができていない。地域の指導者はとても難しい課題を抱えていると思います。室伏:学校だけでやっていると、中学や高校の3年生の最初の試合に負けちゃうと、もうその段階で引退なんてこともあります07信州大学特別鼎談応援されるだけじゃなく「応援できる」存在に
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