中にいる自分と会話して、思考が非常に育っていった感覚があります。また、プロチームに入って素晴らしい練習器具がそろった環境を目の当たりにしたときに、与えられるものは有限、自ら求めるものは無限だと感じました。信州大学のトレーニング施設は体育学部ではないので、それほど器具がそろっておらず、自分たちで工夫しながらやってきました。そんな環境の違いを感じることができたのも私にとってはすごくよかったです。室伏:世界最高峰でトレーニングできたわけですね。そうすると自分の立ち位置がどのくらいのレベルなのか、自分の練習のここが足らないとか、毎日気づきます。目の前にいる人に勝たなければメダルはないというところに身を置けたのはよかったですね。小平:そうですね。遠征だとただ数日会うだけですが、一緒に暮らす、生活をともにするというのはとても大きい経験でした。みんな同じ人間で、同じように悩んで、努力しているんだとわかりました。結城:彼女は「奈緒哲学」と言っているそうですが、オランダで人生を俯瞰したんだなと思います。自分の時間は神様がくれた時間だと。だから結果が出ても出なくても全部正解、これでいいんだと気づいたのでしょうね。これこそがまさに自己肯定感で、「大丈夫、いける」と思うことが自信になって自分の背中を押す。レースで戦う顔つき、アクシデントがあったときのリカバリーなどが全く変わりました。小平:オランダに行ってからは、レース前に食事をしっかり摂れるようになりました。結城:平昌五輪の500mは夜9時半スタートだったのですが、その前に夕食をバクバク食べていましたからね。私は食事が喉を通らないのに。小平:石焼きビビンバをしっかり食べました(笑)。室伏:大きなレースに向けて、しっかりと準備することは大事ですね。過剰に緊張しても力は出ませんから。その日、その時間に力をどう出すか。トレーニングや生活、全てが合わさった結果ですね。──アスリートと地域のかかわりについても伺いたいです。小平:私が夢を目指すきっかけになったのは、地元で開かれた長野五輪でした。地域のみなさんが五輪選手を応援するのを見て、子どもながらとても感動しました。その記憶が強烈にあり、いつか長野でスポーツを一生懸命頑張れたらいいなと思いました。結果的に私も信州大学を選び、ずっと長野で活動していますが、本当に多くの方の支えを受け取り、温かさを感じています。06信州大学を選び、地元で活動多くの方の温かさ感じる
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