KODAIRA Nao社会医療法人財団慈泉会 相澤病院信州大学教育・学生支援機構特任教授小平奈緒長野五輪での選手への応援を見て︑いつか長野でスポーツを一生懸命頑張りたいと思いましたSPECIAL TALK SESSIONだことを仲間とシェアしながら、よりよいものをつくる。互いに成長する関係だなと思います。上から指示して、ロボットみたいに動くのではなく、体も心や精神も同じように成長していくのが、スポーツの素晴らしさですね。──アスリートは引退した後のキャリアもさまざまです。結城:五輪金メダリストのヨハン・オラフ・コス(※2)、エリック・ハイデン(※3)は2人とも医師になり、多方面で活躍しています。一つのことを極めた人は、エネルギーさえかければ必ずほかのキャリアでも成功することを見つけられると私は思います。小平:スポーツの世界に生きていると、競技成績やメダルの色などで評価されてしまうことがとても多いですが、スポーツを極めたときに勝敗を超えたところにある生き方へたどり着ける。このことは多くの人に還元できるところ、いろいろな方の勇気になれるところかなと思います。自分で枠を決めつけず、幅広い人とかかわりながら、人間を育てていけたらいいですね。室伏:まさにその通りですね。アスリートは身体だけをひたすら鍛えているわけではありません。目の前にさまざまな記録のバリアがあり、さまざまな障害がやってくる。それを一つ一つ乗り越え、クリアしていく。スポーツは自分自身を成長させてくれます。──ライバルの存在も大きいのでしょうか。小平:自分とは違うからこそ、その人は自分にないものを持っている。そこにリスペクト※2 ヨハン・オラフ・コス:ノルウェーのスピードスケート選手。1994年リレハンメル五輪で三つの金メダル。引退後、オスロ大学医学部に復学。研究のほか、ユニセフや世界保健機関(WHO)でも活動。※3 エリック・ハイデン:アメリカのスピードスケート選手。80年レークプラシッド五輪で五つの金メダル。引退後、医学部に復学して整形外科医になったほか、自転車競技のプロロードレースにも参戦し活躍した。2009年信州大学教育学部生涯スポーツ課程卒業。17年12月W杯ソルトレークシティー大会で女子1000mの世界記録樹立。18年平昌五輪の女子500mで金メダル、同1000mで銀メダル。22年10月全日本スピードスケート距離別選手権大会の女子500mで13回目の優勝、大会8連覇を飾り現役引退。同11月より信州大学教育・学生支援機構特任教授。社会医療法人財団慈泉会相澤病院所属。が生まれてくると思います。私はライバルを通して、視野の広さや視点のバリエーションを身につけられたと感じます。結城:高め合う存在としてライバルが尊いものだと気づいたとき、競技への取り組み方が一気に変わってきます。足を引っ張る、相手を蹴落としてでも上に行く、このようなことを思う選手は自分で伸びを止めてしまっています。ライバルがいるからこそ、高いレベルの戦いができる。人間として、人類として、そういう視点で競技をやって欲しいなと思います。室伏:そうですね。周りで支えてくださる方があっての自分ですので、自分勝手にならないように、みんなに後押ししてもらえるようにするのも大事ですよね。小平:アスリートは期待を背負っているんじゃないかとよく言われますが、自分への期待が他人からの期待を上回っていれば、期待は全て応援に変わり、自分の力にできるという思いが私にはあります。まずは自分自身に一番期待していないと高みは目指せません。そしてその応援を自分の中に抱けるような関係が築けると、かなり強力なチームとして、みんなとともにいい景色を見に行くことができる。それは素晴らしいかかわり合いであり、温かくやさしいつながりになると思います。室伏:人と同じことをやっていても、なかなかトップアスリートにはなれません。世界の壁はとても厚いです。自分で工夫すること、考えてやること、それを尊重すること。これが大事です。コーチはただ教えるだけでなく、多少間違った方向へ行ってもそれを見守りながら、軌道修正する。結城:まさにその通りです。私はよく自立と依存の関係について考えます。(小平さんが)オランダに行った2年間は全てを自分でやらなきゃいけなかった。このときに、相当自立したと思うんですよね。本当に自立した。そして相談できるような存在になりました。彼女は自立と依存の関係をよくわかっているので、おそらくコーチになってもうまくやっていけるでしょう。小平:オランダに行く前、ソチ五輪くらいまでは、かなりコーチに依存していました。でも1人でどうにかしなければいけない環境に身を置いたとき、自分の中に意見が生まれました。自分の人生を自分でコントロールしていっていいんだと気づきました。まずやってみるという勇気や決心するという覚悟が生まれてきたのかなと感じました。結城:オランダの2年間では、劇的に日本語が伸びたんですよ!一同:笑い結城:表現がとても深くなりました。小平:日本語で誰かと会話する機会が少なかったので、トレーニング中などに自分の05勝敗を超えたところにある生き方へたどり着く期待は全て応援に変わり温かくやさしいつながりに信州大学特別鼎談
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