信州大学は学外の広報有識者に広報アドバイザーとして、広報活動への助言・指導など、多彩な協力をいただいています。2002年朝日新聞社入社。広告局の外部営業、報道局記者、コンテンツプロデュース部などを経て、2015年中東に留学、2016年メディアビジネス局、2018年よりソリューション・デザイン部。信州大学広報スタッフ会議広報アドバイザー朝日新聞社ソリューション・デザイン部川﨑 紀夫氏仲介件数 R4.1/ 管理戸数 R4.8 発表 全国賃貸住宅新聞社調べ チンタイバンクグループ長野県内 24 店舗 全国 500 店以上のネットワーク今月号で掲載した小平奈緒特任教授、結城匡啓教授、室伏弘治スポーツ庁長官の鼎談をコーディネーターとして担当した。世界のトップで長期にわたり戦ってきたお三方の話はいずれも興味深く、1時間という短い時間にもかかわらず本編では収容できないほどのたくさんの話を頂いた。その中から心を打たれた話をひとつ紹介する。室伏さんがハンマー投げの試合後に「洗剤でハンマーを磨いている」という話を聞いたことがあるので、鼎談の終わりに尋ねてみた。すると、洗濯用、食器用、さらにはハンドソープまでをいろいろ試し、一番自分にぴったりくるもの、きれいに磨けるものを見つけて毎回磨いていたとのこと。そもそも試合後にハンマーを磨くことは、最初は室伏さんしかやっていなかったそうだ。しかし次第にその輪はどんどん広がり、先輩、後輩、他大学の選手、そしてそれを見た外国人選手までがハンマーを磨くようになったという。「雨の日は泥の中に投げることもある。でも道具があってこそ自分の技術が磨かれる。道具を一番大切にするのは自然なことだし、そのことでハンマーが自分の一部みたいに思えるようになった」と室伏さんは話した。小平さんもそこに続ける。「大学1年のときに、祖父にスケート靴を買ってもらって、それを18年間、引退するまで履き続けました」。私は信じられなかった。五輪で金メダルを取り、世界の頂点に何度も立った選手が、同じ靴を18年間履いている!?最新の技術を詰め込んだ最高の靴を、メーカーがいくらでも喜んで提供してくれるのではないのか。勝手なトップアスリートに対する思い込みが、ガタガタと崩れていくようだった。さらに小平さんは続ける。「ある日、靴を蹴っちゃってかかとに穴があいたことがあったんです。でも、結城先生がそこにティッシュを詰めてくれて…」。結城さんも「そうそう、結局紙が一番硬いんだよね。なんだかんだ2年に1回くらいはオーバーホールに出したけど、よく最後まで持ったなあ…」もはや言葉が出なかった。もちろん何度もいろいろな靴をトライしたそうなのだが、大学1年で履いたものが一番フィットし、それを丁寧に大切に履いていく。家族の思いがこもった靴を履き続け、前人未到の結果を出していく。コンマ1秒以下、あるいはミリ・センチ単位での戦いを日夜続けるアスリートたちが、どれだけ道具を大切にして練習や試合に臨んでいるのか。お三方の話から、その一端を思い知らされた気がした。道具が自分の一部だとすれば、粗末に扱うことは、自分自身を傷つけることなのかもしれない。しがない週末ランナーの私でも、もっともっと愛着を持って道具とつきあえるはずだと強く感じた。15 ⑯トップアスリートに通じる「道具を大切にする心」
元のページ ../index.html#16