理学部研究紹介2023
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■■■■■■■花木 章秀 研究室■■■■■■■上山 健太 研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像「微分積分などの高校以上の数学など役に立たない」などと言う人がいます。しかし私たちの身の回りには高度な数学があふれています。例えば、スマートフォンなどの通信機器、またごくありふれた家電製品などでも、どれだけの高度な数学が利用されているか分からないほどです。また、近年の情報理論においては「有限」の数学の重要性が増してきています。私の研究の主題は「代数的組合せ論」です。情報のノイズなどを取り除く「誤り訂正符号」、効率の良い配置を考える「配置理論」など、「組合せ論」の扱うことは非常に多岐に渡ります。そのうち、性質の良いもの、美しいもの、の多くは代数的に良い性質をもっています。これらのものを高度に抽象化したものに「アソシエーション・スキーム」があります。それを「代数学」、特に「環論」、「表現論」の手法を用いて研究しています。花木 章秀 教授千葉大学大学院修了博士(理学)山梨大学工学部助手信州大学理学部、講師、助教授、准教授を経て、現在信州大学理学部教授上山 健太 准教授2013年静岡大学大学院修了、博士(理学)。日本学術振興会特別研究員、弘前大学教育学部講師、准教授などを経て、2023年から現職。専門分野は環論、環の表現論、非可換代数幾何学。私の専門は非可換代数幾何学に関係する環や圏の研究です。代数幾何学は、いくつかの多項式の零点集合が定める幾何およびその一般化を研究する学問ですが、代数的側面では可換環(積が可換な環)が重要な役割を担います。代数側には非可換環(積が可換ではない環)もあるので、代数幾何学的な枠組みを非可換にも拡張・活用できればよいのですが、直接的な方法はあまりうまくいきません。それに対して、どう捉えるのがよいのかを研究するのが非可換代数幾何学という分野です。私は特に、非可換次数付きGorenstein環に付随する非可換射影スキームに注目して、Cohen-Macaulay加群の表現論と関連付けながら研究しています。与えられた空間に与えられた形のものをなるべくたくさん入れることを考えます。すき間なく埋め込むことができるのであれば簡単ですが、一般には未解決で、非常に難しい問題の一つです。これは「最適化問題」の一つであって、「配送システム」や「スケジュール管理」など、多くの実用的な応用をもつ問題です。そして「配置理論」の重要な応用例でもあります。私の研究は基礎的なものであって、それが直接的に生活に役立つことは期待しにくいですが、将来何らかの形で何かの役に立つことを期待しています。私のセミナーで学んだことが卒業後の仕事に直接役に立つことはないでしょう。しかしセミナーで学ぶことは学生の能力を十分に伸ばしていると思います。その力をどう活かすか。卒業後の進路はその人次第です。可換な世界の現象や問題でも、非可換まで視野を広げてみた方が見通しが良いことがあります。例えば、「可換だけど複雑な対象」と「非可換だけど簡単な対象」が結びついていて、後者の方が理解しやすいということがあります。非可換な数学が発展することで、このようなことが増え、思わぬ応用、ひいては数学全体の更なる発展につながっていくと考えています。数学を学ぶことで、論理的に考える力はもちろんのこと、新しい概念や考え方に向き合う力も鍛えられます。これらはどのような職業でも役立つはずです。卒業生には社会の幅広い領域で活躍してほしいと思っています。1上の図は射影二次曲面の一例です。非可換な射影二次曲面とはどんなものでしょうか?非可換代数幾何学では、圏と呼ばれる構造が重要な役割を担います。上の図は非可換商特異点に付随する三角圏の様子です。対称デザインFano plane距離正則グラフShrinkhande Graph数理科学コース数理科学コース数学科数学科現代生活を支える基礎科学非可換代数幾何学の深化

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