理学部研究紹介2023
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1、植物の生存の仕組み2、森林の炭素貯蔵3、土砂災害の防止牧田 研究室生物地球化学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像牧田 直樹 准教授大阪府茨木市生まれ。専門は森林生態学、土壌学。2008年神戸大学卒業、2013年京都大学修了(農学博士)。日本学術振興会特別研究員PD(森林総研、ヘルシンキ大学)、信州大学助教を経て、2022年より現職。浦井 暖史 助教信州大学修士課程修了後、民間企業に就職。3年半で退職し、信州大学博士課程に入学。博士号取得後、海洋研究開発機構(学振PD)を経て2023年3月より現職。専門は生物地球化学。根っこや土の物質の動きを通して森林生態系のしくみを研究しています。国内では長野・京都・北海道の森林、国外ではマレーシア、フィンランド、アラスカ等の森林。熱帯から温帯・亜寒帯まで、スコップ片手に飛び回っています。植物の光合成によって獲得された炭素。いったい何処に行き、何処で使われるのでしょうか?樹木の骨格を作るために固定される炭素、呼吸活動で消費される炭素、共生相手である菌根菌に供給される炭素、根からの滲出物として土壌環境に放出される炭素。枯死して土壌へ還っていく炭素。炭素の動きを見ることにより、その植物の生き方や生活史がみえてきます。森の中の(特に根系の)炭素の行方、一緒に追いかけてみませんか!?林野庁、環境省、国土交通省、国立公園レンジャー地方公務員(環境・山林部)、環境コンサルティング製紙会社、建設会社(植林部門)、青年海外協力隊など。当研究室では、メタンに関わる物質循環、特にメタン生成やメタン酸化を担う微生物に関する研究、およびメタンと水圏生態系との関わりについて研究しています。メタンは地球上で最も還元された炭素であり、初期生命誕生にも深く関わっているとされています。メタンを生成する微生物は「メタン生成菌」と呼ばれており、地球上のメタンの約7割を生産しています。一方で、生産されたメタンは「メタン酸化菌」によって生物に利用され、一部は生態系に取り込まれます。こうしたメタン生成やメタン代謝(酸化)のプロセスには多くの微生物が関係しており、メタンを取り巻く生物の役割は非常に重要なのです。 メタン生成菌はCO2からメタンを作る微生物であり、CO2を固定するために利用できないか研究されています。また、メタンは都市ガスなどの燃料資源としても利用できることから、微生物を利用した工業的メタン生成への可能性にも繋がります。また、水圏生態系は漁業や飲料など人間社会と非常に密接な関係を持ちます。水圏生態系の状況を明らかにすることで、現在抱えている諸問題を解決する糸口になります。当研究室では、研究計画・フィールド調査・分析作業・論文化をパッケージとした研究指導を通じて、自らが考えて行動する社会人の育成を目指します。また、研究者として活躍したい学生に対しては、目標実現に向けたサポートを積極的に行います。森林生態系における炭素循環の解明から、植物、主に樹木根系の生存戦略を理解します。森林生態系における炭素の吸収・固定・放出を実測することにより地球温暖化抑制のための方策を探ります。樹木根の土壌崩壊や侵食を防ぐ働きを調べ、崩落土砂による民家への被害を防止、軽減する策を講じます。30マレーシア熱帯雨林の根系採掘の調査風景大きな根っこも小さな根っこも人力で丁寧に掘り集めていく。フィンランド亜寒帯林の断面土壌中に存在する根系の形質や現存量・成長量・枯死量を測定し、植物の生き方や生活史を探る。厳冬期の諏訪湖に出現する「釜穴」(2022年1月撮影)。結氷時でも凍ることがないほど、諏訪湖の湖底から大量のメタンが湧き出ています。メタン生成菌から抽出した化合物「F430」を精製している様子。世界にひとつだけのF430の標準物質を作成しました。理学科物質循環学コース理学科物質循環学コースGoing underground !          根系の謎を発掘メタンと生態系との物質循環を考える

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