理学部研究紹介2023
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武田 研究室中野 研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像武田 貴志 准教授北海道大学大学院理学研究科博士課程修了。東北大学多元物質科学研究所助教・講師を経て、2023年から現職。専門分野は構造有機化学、機能物性化学。中野 健央 助教2015年金沢大学大学院自然科学研究科修了。博士(理学)を取得後、南洋理工大学、相模中央化学研究所、立命館大学、京都工芸繊維大学、九州大学での研究歴を経て、2023年より現職。専門分野は有機合成化学、有機材料化学。人類の文明の進歩は、様々な「材料」の発展によって支えられてきました。特に近年では、従来の金属や無機材料とは異なる有機材料が活発に研究・開発されています。汎用元素から成る有機材料は、資源的制約が小さいだけでなく、「最新の有機合成技術に基づく一分子単位での精密な構造制御」によって、目標とする材料特性への綿密なアプローチが可能な点に魅力があります。その中でもπ共役化合物は、その構造(共役系)によって特異な電子的・光学的特性を示す興味深い化合物群であり、当研究室でも主な研究対象です。現在は特に、様々な複素環を構成単位とする非対称型の新規骨格(主にポルフィリンやホウ素錯体系の化合物)創製に注力しています。この戦略に基づき、「シンプルな構造でありながらユニークな光学特性を示す化合物」という、今後の材料開発のプラットフォーム確立を進めています。有機分子はその構造に由来した多様な運動を示します。一方で、有機分子を集めた有機分子集合体ではその運動は抑制されたり、運動の方向がランダムになることがほとんどです。分子を適切に設計すると、集合体での分子運動をコントロールできることがあります。私たちの研究室では有機合成の手法を用いて「動的な有機分子集合体」を創製し、その機能性を調査しています。例えば分子の運動をそろえることで目に見える大きな応力を発現するアクチュエーターを、極性分子を外部電場によって反転させることでメモリー材料を作ることができます。有機化学についての高い専門性を活かせる分野は材料や医薬品など、多岐にわたります。さらに、研究を通して身に付けられる「主体的に課題の発見・解決に臨む姿勢」は、あらゆる仕事において不可欠です。研究室生活で培ったスキルを発揮し、化学業界や教育界など、幅広い社会における卒業生の活躍を期待しています。有機反応の開発、有機分子の合成とともに有機分子集合体の構造制御とそれに基づく物性発現は有機化学の大きな研究課題です。有機分子の高い分子設計自由度から、有機分子集合体は新しい機能性を示す材料を提案できます。我々は基礎的な観点から、新しい機能を示す有機分子性材料を開発しています。それらが応用されることで、これまでにないような材料が創製されることが期待されます。卒業研究では、未知の研究を自ら進めることで、実験力、論理的思考力、問題発見・解決力、説明力など研究に必要な能力を深めていきます。卒業後は大学院に進学し研鑽を深め、化学系企業に就職し、研究者として活躍している方が多くいます。上記内容で合成した新規骨格を基に、より具体的目標を持った機能性材料の開発を目指します。例えば、新たに合成した光機能性材料を光電変換システムに活用することで太陽光エネルギーの有効活用が可能となれば、化石燃料からの脱却に一歩近づきます。継続的に研究に取り組み、現代社会において課題となっているエネルギー・環境問題の解決に貢献していきたいと考えています。17有機合成を用いて運動性分子を適切に並べて、その中で分子を動かすと巨視的な運動にできる。アルキルアミド基の外部電場に対する共同的な回転に基づく、強誘電性を示す液晶材料様々な複素環を有するポルフィリン骨格外部刺激・環境によって発光色が変化する蛍光材料理学科化学コース理学科化学コース分子運動に基づいた機能性材料を目指した新規π骨格の創製機能性有機分子集合体

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