理学部研究紹介2023
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CoCOH2O大木 研究室石川 研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像大木 寛 教授大阪大学大学院理学研究科博士課程修了。筑波大学助手、広島大学助手を経て、2012年から現職。専門は無機物理化学、固体化学。粉末X線回折のリートベルト解析に、はまっている。石川 厚 准教授信州大学大学院理学研究科修士課程、名古屋大学大学院理学研究科博士課程修了。防衛大学校化学教室助手などを経て2006年より現職。専門は無機化学、物理化学金属錯体とは、中心に金属(主に遷移金属)イオンがあり、その周囲を配位子と呼ばれる原子団が取り囲んだ構造をもつ化合物を指します。私たちの研究室では様々な金属と配位子の組み合わせの中から、例えば非常に大きな空隙をもち巨大な分子をその中にいれることができるような金属錯体を合成し、その物性を調べることを目的に研究を行っています。これまでに知られている配位子の種類は数多く、金属の種類もたくさんあります。従って、その組み合わせの数はさらに膨大になります。その中から、希望する性質を示す化合物を合成するには、何らかの指針が必要です。そこで、新規な金属錯体をいろいろ合成していくことにより、指針を作り上げていくための礎になることを目指しています。これまでに、金属錯体は他の有用な化合物を合成するための触媒として用いられたり、他の化合物を貯蔵する容器として用いられたりしてきました。使われることがあるかもしれません。リチウム元素はリチウム-7安定同位体とリチウム-6安定同位体の混合物です。イオン交換という化学反応を使ってリチウム-7同位体濃縮物とリチウム-6同位体濃縮物を製造する基本原理を研究しています。水溶液とイオン交換体との間のイオン交換平衡の同位体効果を利用します。この化学平衡の同位体効果はリチウム同位体の集団を一括して扱うので同位体濃縮の大量処理に向いています。化学熱力学、量子化学、無機化学合成、元素分析、同位体比分析を使いこなして、分離効果の高い交換体を使った効果的化学分離プロセスを研究しています。 私たちが作っている金属錯体が、いずれそのような用途にまた、全く新しいタイプの金属錯体を合成することで、これまでに知られていない用途が見出される可能性もあります。そのような化合物を見つけることができれば望外の喜びです。卒業後に就職する職種も企業も様々ですが、研究室で培った「論理的思考力」と「粘り強くやり抜く力」で、どのような分野においても活躍できる人材となることを期待しています。原発事故以後、安全な新たな原子炉システムの研究開発が課題になっています。リチウム-7同位体は安全な原子炉として研究開発中の小型高速炉や小型溶融塩炉に必要な材料です。一方、リチウム-6同位体はがん治療法の一つのホウ素中性子捕捉療法に使う中性子線の遮蔽材に使われています。また、国際的に研究開発が取り組まれている将来の核融合発電の燃料になります。卒業研究では実験結果を自ら確かめながら、理解を身に付けていきます。卒業後、仕事の課題に取り組む時、学んだ体験が役に立ちます。中学・高校の教師、公務員、研究・試験所、製造など大切な仕事に就いています。15合成した化合物の走査型電子顕微鏡写真。柱状の結晶が相互貫入した十字型の結晶を形成していることがわかる。合成した化合物のエックス線回折パターンを解析し、金属錯体の構造を描いた図。金属のまわりを色々な配位子が取り囲んでいる。カラム法イオン交換の実験。交換体はNH4型ゼオライトA。Li濃度(●)と同位体比(○)を測定。最初の溶出液にLi-7が濃縮し、最後にLi-6が濃縮した。[Li(OH2)4]+の量子化学計算。水分子がゆらゆらしてLi+が飛び出そうとするが引き戻される。Li-7が水に捕まりやすく、そのためLi-6は交換体へ行く。理学科化学コース理学科化学コース無限の可能性の中から、       一粒の宝石を求めて同位体を分ける

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