理学部研究紹介2023
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佐々木 格 研究室川村 研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像佐々木 格 准教授北海道大学大学院理学研究院にて博士(理学)を取得。日本学術振興会特別研究員を経て 2009 年から信州大学にて助教、 2014年から現職。専門は数理物理、作用素論、量子系のスペクトル解析。川村 嘉春 教授名古屋大学理学部卒業、金沢大学大学院修了(学術博士)、専門分野:素粒子物理学、研究業績:軌道体を余剰空間として含む大統一理論(Orbifold GUT)の創始。量子力学の数学的基礎は 1932 年にフォン・ノイマンによって与えられました。1951年の論文で加藤敏夫によって原子系のハミルトニアンの自己共役性が証明され、原子・分子からなる量子系の数学的に厳密な取り扱いが可能になりました。さらに電子・原子核と量子電磁場との相互作用を加えることで、より精密な物理モデルとなります。量子電磁場のような無限自由度を持つ量子系の解析には、赤外・紫外発散と呼ばれる特有の困難があり、これを解析する方法がいくつか見つかっていますが、完全な理解には至っていません。少しでも無限自由度の量子系の理解を深められるように日々研究しています。素粒子や宇宙の標準模型を超える物理法則を探究しています。研究のキーワードは超対称性、力の大統一、余剰次元、インフレーション、暗黒物質、暗黒エネルギーです。超対称性はボース粒子とフェルミ粒子の間の対称性で理論構造に自然さや美しさが生まれます。力の大統一により、重力を除く3種類の力(強い力、電磁気力、弱い力)が1種類の力として理解できます。余剰次元を用いて、物質粒子の世代構造などの謎が解明される可能性があります。インフレーションにより、ビッグバン状態にある平坦な宇宙が生まれます。暗黒物質は宇宙の構造形成における黒幕ですが、正体不明です。「暗黒エネルギーはなにものか?」が最大のミステリーです。ポアンカレが「科学の価値」の序文で「真理の探求—これがわれわれの行動の目標でなければならない」と述べているように、数理物理学の目標も真理の探求です。自然科学の基礎的法則と現象の間に隠れている数学的構造を解き明かす事が目標です。いくつか問題は真に独創的で美しい方法で数学的に証明されました。問題が解決すると次の新しい問題が生じます。未来の人も我々と同じように難問に頭を悩ませているでしょう。これまでの卒業生の主な進路は情報関連企業、公務員、数学の教員、金融です。勉強・研究で身につけた数学的知識、論理的能力を各分野で生かしてください。さらに研究を続けて研究者を目指すこともできます。自然界の構造をより深いレベルで理解することにより、宇宙の始まり、宇宙と物質の進化、宇宙の未来が解明されるでしょう。それに伴い、時空構造や素粒子の存在形態に関する必然的な理由、すなわち、我々の存在理由が明らかになる可能性が生まれます。これは人類の貴重な知的財産として、様々な知的活動の礎になることでしょう。将来進む道は多種多様です。新しい物理学をつくる(研究者)、物理学の伝道者になる(教員)、物理的手法(原理・原則に基づく論理的な思考法)を用いて社会で活躍する(技術者・開発者)などがあります。7黒板の前で議論を行いながら研究を進めることもある。Rabi モデルと呼ばれるシンプルな模型のスペクトルの様子。数値計算で結果を予想することができる。しかし数学な証明が与えられない限り、その現象が理解されたとはいえない。素粒子の標準模型の根幹をなす数式。宇宙の標準模型の根幹をなす数式。自然情報学コース理学科物理学コース数学科無限自由度の量子系の数学的解析神の領域に迫る物理法則を求めて

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