理学部研究紹介2023
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乙部 厳己 研究室謝 賓 研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像乙部 厳己 准教授東京大学教養学部卒・東京大学大学院数理科学研究科修了。博士(数理科学)。専門は確率解析、数理物理学等。謝 賓 教授東京大学大学院数理科学研究科博士後期課程修了。信州大学テニュア・トラック助教、准教授を経て現職。専門は確率解析。(常)微分方程式に雑音項が伴う確率微分方程式は微粒子の運動を記述し、偏微分方程式はその総体として巨視的観点での運動を記述します。その中間域は雑音項による乱雑さと偏微分方程式に由来する平滑さとがせめぎあい、複雑な、しかし極めて豊かな構造を持っています。その基礎理論と応用の両面を統合的に取り扱います。また無限次元空間上に定義された関数に対して解析学を展開します。一方で学生及び院生の研究としては、数理統計学や数理ファイナンスの諸理論も研究対象としています。確率解析、特に確率微分方程式と確率偏微分方程式を中心に研究を行っています。確率論とは世の中にでたらめに起こる現象に潜んでいる一定の規則性を見たしそれを解析するための数学です。例えば、大数の法則や中心極限定理は有名な規則性として知られています。確率(偏)微分方程式は、(偏)微分方程式に時間の変化とともに独立に外部から入ってくるランダムな要素を付け加えて得られる方程式です。このような方程式について、解の存在やその一意性といった基本的な問題をはじめ、エルゴード性、安定性および爆発問題などの長時間の振る舞いに取り組んでいます。自然現象や社会現象などの各種現象から本質的部分を数学的に取り出し、純粋数学的に解析した後でもとの現象と比較・考察を行う方法を数理モデルと呼びますが、その手法によって現象の最も本質の部分を明確に理解できるようになります。学生は主に統計学やファイナンス理論を学びます。これらは現代のデータ分析や意思決定において必須となる基礎理論です。そのため領域を問わず現代社会の土台の一端を担うことになります。確率微分方程式および確率偏微分方程式は統計物理学、場の量子論、集団遺伝学、工学などの自然科学の諸領域において重要な役割を果たしています。さらに、自然科学のみにとどまらず、金融、ファイナンス、保険学などの分野においてさえも、その有用性はよく知られている。例えば、近年ファイナンス(企業金融)と数学の融合した数理ファイナンスには確率微分方程式の理論が必要不可欠です。確率論や確率過程論に関する基礎知識を身につけて、現実社会の問題へ応用できれば嬉しく思います。卒業生・修了生には学んだ知識を生かして、保険会社、銀行、証券会社に活躍しているものが何人もいます。また、中学校や高等学校などに就職した卒業生もいます。6最も基本的な確率偏微分方程式である確率熱方程式とある時刻でのその解の様子(空間方向)実数上の微分を無限次元空間で部分積分するという驚異のアイディアによって解析学・幾何学の超難問へ革命的な突破口が開かれた。ここに確率解析学が誕生した。旧10マルク紙幣(中心極限定理に現れた正規分布とガウス(1777-1855))(1)Black-Scholes の株価変動モデル(2)確率微分方程式(3)確率熱伝導方程式(1)(2)(3)自然情報学コース自然情報学コース数学科数学科確率偏微分方程式と確率解析ランダムな現象の解析

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