理学部研究紹介2023
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5 4 3 2 1 0-4-2 0 2 4 6 8 10宮西 吉久 研究室中山 一昭 研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像宮西 吉久 准教授東京工業大学卒業、大阪大学にて博士号(理学)を取得。大阪大学特任研究員、特任助教、特任講師を経て2021年度から現職。専門は、大域解析学。中山 一昭 准教授東京大学大学院理学系研究科 (博士(理学))主な研究分野: 非線型可積分系、非線型散逸系、流体系、エージェント系物理現象から生命現象に至るまで、様々な現象は、微分や積分と呼ばれる計算を組み合わせて表現されています。例えば、音や電磁波の伝搬は、ラプラス作用素と呼ばれる(偏)微分と呼ばれる計算を組み合わせた線形作用素で表現されています。さらに音の伝搬ならば、波長や周波数のように、音の高さを求めることになります。ここで音の高さに対応する言葉を、数学ではスペクトルと呼んでいます。他の現象でも、様々な線形作用素のスペクトルを求めることは、現象の特徴を捉えることに繋がります。私の研究の目的は、多くの現象に対応する線形作用素とスペクトルの関係を調べることで、数学的な構造を捉えることにあります。少し一般的に書くと、やっていることは非線型力学系。つまり線型でない力学系ということで、線型のときにはなかった面白いことが沢山生じます。例えば流体。ここでは渦という構造が目を引きます。有名な鳴門の渦潮はカルマン渦というもので記述されますし、竜巻のような細長い渦は非線型可積分系と解釈出来ます。また波動も流体の重要な構造の一つで、甚大な被害をもたらす津波は非線型可積分系としての側面を持ちます。或いは別の例として学習の問題。集合知は人類の文明を急速に発展させましたが、その集合知の形成されるメカニズムをエージェント系における非線型力学系と見て調べると、色々と興味深い側面が見えてきます。解けない方程式でも、対応するスペクトルなどの値ならば、捉え易い可能性があります。スペクトルには意味があることも多いので、様々な現象の説明にも利用できると考えています。また、量子力学、幾何学や数論とも深い関係があり、例えば数論では、ゼータ関数の零点と呼ばれる値とスペクトルの関係もみつかりつつあります。このように、線形作用素のスペクトルは、数学の進歩にも大きな役割を果たすと考えています。すっきりとわかることや理解することに慣れることで、多くの分野で活躍する際にも、方針や理解が進むことと思います。将来、仕事を進める上でも、完全に理解する癖をつけておくことは、必ず役に立つと思います。我々人類の来し方行く末を思うとき、解決すべき問題はほぼ非線型だと思います。環境、気象や気候変動、財政や経済、渋滞、食料、エネルギー等々、問題は山積しています。これらの問題を少しでも解決するならば、未来に多少の光明を見出せるかも知れません。かつて恐竜は2億年もの間この地球を支配し繁栄しました。我々人類の2億年後は如何?教員、公務員、金融関係など、主要なところに就職が決まっています。修士まで終わった人の中には、自動車関係、航空宇宙関係などといった、数学の専門知識を生かせる分野に進んだ人もいます。5ノイマン・ポアンカレ作用素と呼ばれる線形作用素に対して、スペクトルを計算している例(図では、スペクトルに対応して振動している固有関数と呼ばれる関数の様子を図示している)。K. Ando, H. Kang, Y. Miyanishi, T. Nakazawa (2021)より電磁波の屈折は、線形作用素のスペクトルでコントロールされる。もし、電磁波の反射、屈折、干渉や回折を自由にコントロールできれば、透明人間(外部から見えない)ができる!津波のモデルとしてのKdVソリトン。エージェントと多腕スロットマシーン(Nakayamaet. al., Scientific Reports, 7:1937, 2017)数理科学コース自然情報学コース数学科数学科大域解析学:線形作用素の     スペクトル理論とその応用非線型に潜む美

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