附属松本中6年次 実施報告書
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の教師の思考・判断を大切にしている。 ③小学校高学年 ~各教科の見方・考え方も活用して探究していく【領域の教科化】~ 小学校高学年では,低学年時の特徴に加え,もっと詳しく知りたいと願い,より各教科の見方・考え方を求めるようになっていく。そんな子どもに対して,教師は,それまでに獲得した素朴でバラバラな概念を,束ねたり深めたりしながら探究的に学べるよう,領域から教科に接続し,単元や授業をデザインしている。 実際,子どもは,これまでの経験によって積み上げられた具体物を用いた学びから,目では捉えにくい抽象度の高い学びに対して興味関心を抱いている。そこで教師は,身の回りの経験では得られない新たな世界を開拓していけるような場を位置付けている。 ④中学校 ~自己の学びを自覚的に把握しながら探究を深めていく【教科等の総合化】~ 中学校では,社会の入り口に立つ中学生が,各教科等の見方・考え方をとことん働かせながら,自己の学びを自覚的に把握しながら探究を深め,生きた現実に対峙できる地球市民に育ってほしいと考えている。そのために,生徒の「思いや願い,問い」から発し,生徒が教科の枠にとらわれず,学びの場・方法・内容を総合しながらとことん探究し,一人一人が確かな学びを構成していけるよう,以下の2つに力を入れて取り組んでいる。 1つは,全教科で探究的な学びのデザインに取り組み,その実践の記録の分析や探究的な学びそのものの捉えの見直しを継続していることである。教師は探究的な学びをデザインする際,生徒が立ち止まらざるを得ない場面や,学びを振り返らざるを得ない場面を位置付け,「思いや願い,問い」の質の変容を支えている。そして,単元末には,探究的に学んできたことが,「今の自分やこれからの自分にとってどういうことであるのか」と自分自身の生き方を問い直していく姿や場面を位置付けている。 もう1つは「学級総合」としての総合的な学習の時間である。総合的な学習の時間については,実生活や実社会にある「もの・ひと・こと」と具体的に関わり,その中で生まれる生徒の「思いや願い,問い」から,学級ごとにテーマや活動を立ち上げている。中学校では3年間クラス替えがなく,学級担任は同じ学級を3年間受けもつ。総合的な学習の時間の学習単位は学級とし,「学級総合」を行っている。学級担任は,3年間の学級総合の中で育みたい生徒の姿と,そのために考えられる活動等の見通しを「総合カレンダー」として表す。「総合カレンダー」を全教員で共有したり,「総合を語る会」を開催し,各学級の総合の活動内容や成果および課題を語り合ったりすることで,教科担任が学級総合との関わりを意識した教科の授業を展開し,教科の学習と学級総合の学びが往還できるようにカリキュラムマネジメントを試みている。 (3)子どもから立ち上がる探究が幼小中に一貫しているか 幼稚園では,「自分の『やりたい』」を行っていくために,それを支える援助をしている。小学校低学年では,子どもの「思いや願い,問い」から始まり,「自分の探究課題」解決に向かう学びについて,その子らしい対象との関わり方での探究を支えるために,「ことば」「かがく」「くらし」「ひょうげん」の4つの領域を設定した。小学校高学年では,子どもの「思いや願い,問い」から始まり,「自分の探究課題」解決に向かう学びについて,その子らしさに加えて各教科の見方・考え方を活かした探究を支えるために,各領域から教科へ接続した。中学校では,「自分の探究課題」解決に向けて探究していく中での「思いや願い,問い」の質の変容や発展的な連続を支えるため,自己の学びを見つめ,自己の学びを自覚的に把握しながら探究をさらに深めていくための学びをデザインした。子どもから立ち上がる探究が幼小中に一貫したものになっているのか,「遊び」「遊びの領域化」「領域の教科化」「教科等の総合化」それぞれの探究的な学びを支える要件と方略について,実践と省察の中から明らかにすると共に,令和4年度は,領域から教科への接続のタイミングと,小学校高学- 4 -

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