附属松本中6年次 実施報告書
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(4)卒業生へのインタビュー調査(学級総合での学びを振り返って) - 39 - 全体的な会話のイメージや雰囲気をつかむことができ,ディスカッションや会話など抵抗なく取り組むことができた」と,中学校3年生の生徒は,小中学校の英語科の授業を振り返った。また,中学校の英語科教員は,「ALTや留学生と積極的に会話をする姿が見られる。臆することなく,自分の考えた表現で話したり,交流する相手の思いに心を寄せ,コミュニケーションを図ったりすることができる」と生徒の学習の様子について語った。 このような感想や姿が見られたのは,小中がともに願う英語学習における児童生徒像を共有したり,小中9年間の一貫のCan-doリストを作成し,指導に当たったりしたからだと考える。また,小学校段階で,基礎的な知識及び技能を習得し,それらを活用し,自己が見つけた課題を解決していく過程を重視した学びが中学校での探究的な学びにおいても効果をもたらしていると考えられる。 別の生徒は小中学校の技術科の授業を振り返り,「小学校の技術では,スクラッチでプログラミングの基礎を学んだことで,中学校のプログラミングもソフトは違っても考え方は同じなので考えやすかった。小学校の段階でプログラミングの考え方を知って身に付けられたのは自分でも強みだと思う。ものを作る活動では使う相手を意識してものづくりをしてきた。中学校でもものを作るときに誰が,どのような状況で使うのか,相手を考えてものづくりをできた」と語った。 小学校で培ったプログラミング的思考力が中学校でも活用され,さらに育まれたり,中学校でもユーザー視点といった技術科の見方・考え方を働かせて学習に取り組んだりできたと考えられる。 このことからも,小学校高学年における英語科,技術科の設定は妥当であると言える。 さらに今後は,小学校で技術科,英語科を担当した教員が中学校を参観し,より多くの目で見たより多くの声を集め,検討していくことで,妥当性をさらに確かなものにしていきたい。 令和5年1月,昨春中学校を卒業した卒業生に,中学校での学級総合を振り返り,今現在,どのようなことを感じたり,考えたりしているのか,インタビュー調査を行った。 Q 学級総合を振り返ってどのようなことが身についたと考えていますか。 A いろいろなことを学びましたが,一番大きかったのが,自分で考える力がついたと思います。先生から与えられた問いではなく,自分の問いを解決していく。先生から出された問題だと,先生の答えがあるのかなって思ってしまう。先生や友達からアドバイスはもらえるけど,解決していくのは自分なので,自分の頭で考える。そこが学級総合で一番楽しかったし,達成感も感じられたし,身についたことだと思います。あとは,自分の課題を追究していくと友達はどんなことをしているのかなってことも気になって,自分にはない発想もあっていいなと思いました。私たちは大豆から味噌を作ったんだけど,Yくんのグループは大豆の油からキャンドルを作っていて,食べ物以外にもそんなことに使えるんだって感動したことを覚えています。醤油麹を作った班は,思いっきり失敗して,教室がすごく臭くなって。でも,そんな時に,「あー失敗していいんだ」って思ったんです。学校の勉強って失敗しないように学んでるって感じがあったんだけど,失敗して学べばいいんだって。班で「地産地消」にこだわった味噌づくりに挑戦したときに,味噌はどうやって作るのだろうという疑問から,本やインターネット,お店の人に聞いて情報を集める。そして,その情報を基に,自分たちの味噌づくりに挑戦する。その過程を振り返って,また,次にどうしたらいいのかという疑問が出る。もっとよくしたい,次はこうしたいという思いがずっと続いていく体験ができたのがよかったと思います。班で協力していくっていう経験も今に生きているような気がします。自分の意見も大切にしながら,人の意見も大切にする。いろんな考え方があるから,そういうのを調整というか,合わせて考えていくことができるようになったと思います。 この生徒は,学級総合で3年間味噌づくりに取り組んだ。最初はそれほど味噌に対する興味はなかった。しかし,味噌について調べていくと「歴史」,「発酵食品」,「長野の産業」「栄養価が高い」など,さまざまな側面があることに気付き,興味をもち始めた。そして,学校近くの味噌屋さんを見学にいった際に,「手作りの味噌の生産量が減っていること」や「作り手によって味が変わる」という話を聞いた。そして,自分たちで収穫した大豆を使い,家族や地域の方を笑顔と健

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