附属松本中6年次 実施報告書
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- 33 - 分の考えを友達に伝えることができるようになっていった。 教師が,生徒の「思いや願い,問い」に沿った言語活動を単元に位置付けると共に,生徒がコミュニケーションを取る相手に対して伝えたい内容があることを事前に想定し,それを支えるために,どのような表現があればより言語活動が促進されるかを単元や授業構想時に考えておくことで,生徒の探究的な学びを支えていくことができると考えられる。 ⅲ)生徒の意識や学びの姿を具体的にイメージした教材研究の必要性 単元の最初は,教師は,自分の考えた単元構想が強く,生徒の意識や姿を捉えることができず に,自分が考えた単元の通りに授業が進むにはどうしたらよいのか,ということことばかり考え ていた。しかし,単元が進む中で「マット先生に,氷鬼のルール伝えたい」という真剣な生徒の 表情を目の当たりにして,生徒の「思いや願い,問い」を見ていないのではないかと感じた。「レクのルールをマット先生に正確に伝えたい」という願いをもった生徒たちに,教師は,どのように支援すればよいのかを考えることができるようになってきた。生徒が題材に出会ったときの意識を何度も考えたり,生徒が探究的に学んでいく具体的な姿をイメージしたりして,支援できるよう教材研究を深めていきたい。 【事例③】 題材名:「鯛萬の井戸 憩いの場プロジェクト」(2年 総合) 自分やクラスの友達が収集してきた情報をICTを用いて整理・分析することで,新たな課題や 課題を解決する見通しをもつことができたH君 2年C組担任のY教諭は「ボランティアで鯛萬の井戸を清掃する灰松さんや大野さんに生徒が出会い,鯛萬の井戸の維持・管理について話を聞くことで,鯛萬の井戸を多くの人に愛される憩いの場にしたいと思うのではないか」と考えた。そこで,Y教諭は,何度も鯛萬の井戸に出かけ,教師自身が井戸の雰囲気や魅力を感じるとともに,自分が担任をする2年C組の生徒たちは,どんなことを感じたり,課題と考えたりするかを予想した。予想される生徒の考えを書きだしていくと,鯛萬の井戸には「少子高齢化」,「地域の歴史文化」「水の安全」「財政」「観光」「ものづくり」など,多面的に考える要素があり,各教科の見方・考え方を働かせて,探究できることが期待できると考えた。また,井戸を取り巻く地域の方々と交流しながら,自分たちに何ができるのかという社会参画の視点をもち,活動が展開できると考えた。そして,クラスで何度も話し合い探究課題を「井戸水憩いの場プロジェクト」と決め出し,学校の近くにある「鯛萬の井戸」を多くの人に愛される憩いの場にしたいと願い,活動に取り組んでいる。 担任のY教諭は,自らのクラスの学級総合を振り返り, 探究のプロセスの中でも「整理・分析」,「まとめ,表現」に対する取組が十分でないという課題をもっていた。そのため,活動が単発的になってしまったり,生徒たちの問いが深まったりしていないと感じていた。そこで,生徒が「鯛萬の井戸」について収集してきた情報を,Jamboardを用いてP(良さ)M(課題)I(面白さ)の3観点で整理・分析することで,今後の課題を明確にしたり,PMIの相互の関連性に気付いたりしながら,具体的な解決策を考えることができるようにした。 H君は,自分が「鯛萬の井戸」に行って感じた情報や友の感じた情報をPMIに整理していった。そして,それらを分析し,PMIには「環境面」「認知度」「発信」があることを見出した。さらに,2年C組が行っているものづくり(ベンチ・さきおり・竹・和紙ランタン)で井戸の環境を整え(環境面),高齢者には「鯛萬の井戸」を知ってもらうためのポスターを作成し,若年層にはインスタグラム等で発信していくこと(認知度・発信)など具体的な解決策を考えることができた。このように「整理・分析」の過程を充実させたことで,新たな課題や課題を解決する見通しをもつことができ,「鯛萬の井戸」を活性化させようと意欲を高めることができたと考えられる。

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