附属松本中6年次 実施報告書
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- 27 - 小学校2年生では,クラスで藍を育てた。子どもたちは,「大きく育ってほしい」という願いをもって,藍と関わっていった。枯れている藍を見つけた子どもたちは,「自分たちもせまいと手を伸ばせないから,藍も困っている。」「藍は,私たちとちがって,動けないんだよ。」と,藍を「お引越し」をさせてあげたいという願いをもつようになっていった。藍の植え替え場所を選ぶとき,畑の大きさから考える子は算数的な見方・考え方,土質や日当たりから考えていく子は生活科・理科的な見方・考え方で植え替え場所を考えていく。これを「今日はどんな畑の大きさがいいか考えよう」と教師がみんなで一つのこと考えさせると「僕は日当たりから考えたいのに」と思う子が出てくる。そうではなく,「藍のためにより良い植え替え場所を見つけたい」という子どもの願いを大切にしたとき,それぞれの見方・考え方で藍の植え替え場所を考え,よりよい植え替え場所を選んでいけるように「かがく領域」としてこの単元を構想した。 M児は,まず,教室近くの丸い花壇に藍をお引越しさせてはどうか考えた。しかし,花壇の大きさを考えると全ての藍をここにお引越しすることはできない。だが,M児の選んだ花壇は土が柔らかった。「土の柔らかさは大切」だとM児は鍬を持ち,様々なところに鍬を刺し土の感触を確かめ,お引っ越しに最適な場所を探していった。Y児は藍が枯れてしまう原因を日に当たりすぎてしまうからだと考え,日当たりに着目してお引っ越しする場所を探して行った。友が集まっているところに行っては「なんでここがいいと思ったの?」と尋ねながら,「日当たりはどう?」と声をかけ,友がいいと考えているところの中で一番日が当たりすぎない場所を探して行った。A児は畑の広さに着目していた。教室前の畑に約半分の藍を残せるということを導き出したA児は,お引っ越しさせる藍の行き先も教室前の畑と同じくらいの大きさが必要だと捉えていた。広い場所を見つけると「ここだったら余裕で藍をお引越しできるでしょ」と広い場所の候補をいくつも挙げて行ったのだった。 土の柔らかさを大切にしたM児は,「自分も寝るのだったら硬い布団ではなくふかふかの布団の方がいい」と語るなど藍の居心地を意識してお引っ越し先を探していた。また,日当たりを大切にしたY児は,「僕たちもずっと暑い太陽に当たってたら嫌で涼しいところに行きたくなるでしょ,藍も同じことを思っているんだけど自分では動けないから涼しいところにお引っ越しさせてあげたい」と語り,涼しさを根拠にお引っ越し場所を探していた。畑の大きさを大切にしたA児は「同じくらいの大きさではなくて,小さい畑をいくつも作るのはどう?」という友の声がけに「それじゃー藍が離れ離れになってかわいそうだよ。ぼくも友だちと離れて一人だと悲しいからできるだけ一緒にいさせてあげた方がいいよ」と語るなど,藍と自らを重ね合わせてお引っ越し先を考える姿があった。 このように,小学校2年生では,植物を育てるときに,対象を自分と重ね合わせ,対象を「人」や「仲間」として接することで,気持ちを考えたり,解決の方法を考えたりしながら様々なアプローチで探究を進めていく姿が見られた。 【事例②】単元名:「スーホの白い馬」 【1年 2年 ことば領域】 2年生の「お手紙」では,言葉だけではなく挿絵の対比からも,物語の展開を読み取っていた。例えば,「お手紙」の学習では,最初と最後の挿絵の違いから,「何でだろう」「何があったんだろう」という問いが子どもたちの中から自然と生まれ,「心情曲線」を使いながら,物語の中の登場人物にどのような心情の変化が生まれたのかを読み取っていった。嬉しい時は赤色やオレンジ色等の明るい色を使ったり,悲しい時は青色や紫色を使ったりする等,その子なりのやり方で探究していこうとする姿が見られた。1年生の「おおきなかぶ」や2年生の「スイミー」では,動作化やペープサートによって登場人物になりきり,お話の世界に入り込んでいく姿も見られた。例えば,2年生の「スイミー」の学習では,「ぼくが目になろう」という「スイミー」のセリフをまるでヒーローになったかのように演じながら読んだり,教室の中に様々な色のビニールテープを使ってサンゴが海中で漂う様子を再現したりした。「スイミー」という物語の世界の一員となるこ

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