5年次 実施報告書
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③子ども側の視点に立った探究的な学びのデザイン ア 子どもの「思いや願い,問い」を大切にした学び 子どもが,「3つの力」を発揮できるようにするために,教師はこれまで本学校園において暗黙の了解であった子どもの「思いや願い,問い」を大切にすることが必要である。 イ 探究的な学びの捉え 本学校園における探究的な学びとは,教師が定めた目標に子ども全員が到達するように,教師が生徒を導くものではなく,一方で自分の「思いや願い,問い」に向かって進む子どもを,教師が後から追いかける放任でもない。子どもと教師が共にその教材を通して学んでいく先にある,新たな自分を予感したり,期待したりしながら,自分の「思いや願い,問い」から,体験や対話などを繰り返しながら自ら進み,その先に自分の予感や期待を学びとして構成していくものなのではないかという認識を,職員間で共有しつつある。 ウ 探究的な学びのデザイン 探究的な学びをデザインする際,2つの視点を大切に環境設定や教材研究を重ねている。 1つ目は「その環境や教材を通した遊びや学びが,子どもの一人ひとりの在り方や生き方につながるか」という視点である。それはつまり,「環境や教材との出会い」の場面で,その環境や教材と,子どもの生活や世界との接点を,子ども自身が予感することができるかどうかということである。また,出会いの場面で子どもに生まれた「思いや願い,問い」が,その先にどんな「学びを味わう」場面へつながるかを見つめることを大切にしている。それは,その遊びや学びを通してどんな力をつけるのかという発想ではなく,探究的な学びの最後に,子どもたちと分かち合いたいものや場面を具体的に想像し,それが子どもの在り方や生き方にどうつながっていくかを見つめることである。 2つ目は「子どもはどんな見方・考え方を働かせながら,問いの質を変容させていくのか」という視点である。子どもが自分の「思いや願い,問い」からとことん追究し,その中でまた自分の問いを変容させていく過程の中で,そこに働く様々な見方・考え方についての視点である。校園種の別なく,問いの質の変容こそが,探究的な学びを支える大きな要素だという手ごたえを,私たちは掴みつつある。一方で,園児はもちろんのこと,中学生であっても,上述のような見方・考え方に自覚的になることは難しい。まずは,教師が子どもの姿を見つめ,働いている見方・考え方を深く想像することを大切にしている。 ④校種を越えた教師が協働して12年間の子どもの育ちを支える 以上のような概要を踏まえ,私たちは「たくましく心豊かな地球市民」としての資質・能力を養う,実生活の諸課題に対し「3つの力」を軸として,様々な資質・能力を有機的・総合的に育む,12年間の教育課程および指導・評価の開発を行ってきた。 教員が校種を越えて「子どもがもともと持っている資質・能力の強みを生かして教育課程を編成すること」を目指してきた。教師は子どもに内在する資質・能力「3つの力」と資質・能力の「三つの柱」の関係をとらえ,「子ども側の視点に立った授業づくり」を実践してきたことで,学び手である子どもが,自身のよさを生かして学ぶことがわかってきた。 子どもは12年間を通して「3つの力」を発揮しながら,様々な資質・能力を有機的・総合的に育み,「3つの力」自体も育んでいる。だからこそ,そのよさや強みで貫いた12年間の教育課程が必要であると考えた。 そして,子どもの発達段階や学び方の特長に応じて「遊び」「遊びの領域化」「領域の教科化「教科等の総合化」とした12年間の「学びの総合化」の教育課程を編成し,「探究」を幼小中の共通の窓口として教育活動を進めている。(図2) 図2 本学校園の教育課程『学びの総合化』の全体像 - 4 -

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