5年次 実施報告書
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浅間温泉で働いている人が働く時に歌う感じ,湯もみっぽい感じ→仕事 浅間温泉に泊まった時に流れていそうな感じ→温泉街 お祭りっぽい感じ,お祭りの時に酔っぱらって歌っている感じ→祭り 軽く飛び跳ねながら楽しそうに踊る感じ,盆踊りっぽい感じ→踊り 宴会の時に酔っぱらった人が歌っている感じ→宴会 お風呂に入りながらのんびりくつろいでいる感じ→風呂 ‐37‐ 『浅間節』を聴いた生徒が,どのような「自分の感じ」をもつか書き出し整理していく教師 1)生徒の「思いや願い,問い」をみつめる教材研究 地域に伝わる民謡「浅間節」による実践を前に,教師がまず行ったのは,生徒たちの顔を浮かべながら,「浅間節」に出会った生徒がもつであろう「感じ」を想像することだった。何度も何度も『浅間節』を聴きこみながら,模造紙を広げ,予想される「感じ」を書き込んだ。授業者一人ではなく,複数の教師が集まって,生徒の心がどう動くかについて語り合うことで,予想される生徒の姿は,どんどん立体的になっていった。そして,一つ一つの「感じ」をつなげていくと,生徒が抱く「感じ」には,模造紙1枚では収まらないほどの面であることが分かった。そして,生徒の思考・判断が,面と面をつないだり面と面を往還しながら流れたりしていくのではないかという予想が目に見えてきた。 さらに,それらを学習指導要領に示されている「音楽の見方・考え方を働かせている姿」とのつながりを踏まえて再構成していくと,生徒が探究のサイクルを描きながら題材を展開していく大きな絵が見えてきた。このことにより,「『浅間節』を形づくっている音楽の要素」,「『浅間節』と生活・文化・伝統」,「3年C組の生徒と『浅間節』とを取り巻いている環境」,について生徒が働かせる見方や考え方を様々に表現していくことで生まれる生徒の問いの変容,そして,そのために必要な教師の支援が明らかになってきた。 実際の授業の「浅間節」と出会う場面では,形森さんは「ヨイショヨイショナ」の所で足踏みをしたり,リズムに合わせて手でファイルを叩いたりしていた。「浅間節」の跳ねる感じや合いの手が入るリズムの面白さに,自然に体が動いてしまう様子が見られた。これは,教材研究の中で教師が予想した生徒の姿であった。そこには,「リズムや音色」「フレーズやテンポ」という見方が無意識の中で働いていることも読み取れた。ここから「浅間節」から感じていることを,音楽の要素と結びつけながら,そこに働いている見方・考え方を自覚していくことができるのではないかという,教師の予感が高まった。その後,生徒から出された「感じ」をグルーピングしながら板書していくと,右のようになった。 2)探究的な学びのデザインと実際の子どもの姿が重なることで見えてくる学び 教材研究から見えてきた生徒の探究のサイクルを見通した探究的な学びのデザインが,単元を通して教師の支えとなった。一見無目的で衝動的な「遊び」のように,ひたすら楽器を打ち鳴らし,楽しんでいる生徒の姿を,教師は安心してみることができるようになった。事前に見通した生徒の姿と重ねて,「Aさんはリズムのよさを感じながら,そのよさに合う楽器の音色を探しているんだ。リズムと音色という音楽要素を自分の感じ方と重ねているんだな」など,生徒の姿から「思いや願い,問い」やその端緒を捉えることができた。また,「楽器や音と向き

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