5年次 実施報告書
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‐23‐ 共通の窓口としながら,保育・授業をデザインし,実践記録の分析や「探究的な学び」の捉えの見直しを継続している。現在本学校園の職員は,「探究的な学び」についてのイメージを,「その教材を通して学んでいく先にあるだろう新たな自分(豊かな見方・考え方,資質・能力の伸長など)への予感や期待に向かって,自分の「思いや願い,問い」から,体験や対話などを繰り返しながら自ら追究し,自分の予感や期待を学びとして構成していく学び」と共有しつつある。 また,「3つの力」を,私たち本学校園職員は子どもを見つめる視点として共有し,保育・授業の相互参観を行っている。事後の研究会の中では,本時見られた子どもの姿や捉えた姿をもとに読み解いたことが語られるだけではなく,向き合っているクラスの子どもたちの姿を重ねて語れるようになってきている。これは,12年間を本学校園で過ごす子どもを,校園種の別なく「3つの力」がどう発揮されているかという視点で見続けたことによる,本学校園職員の変容のひとつである。さらに,そのような営みの中で,「3つの力」が十全に発揮される環境を整えることが,子どもの「探究的な学び」を担保することに手ごたえも感じている。 また,小学校教員は領域化部会・教科化部会で,児童の意識や行動の変容,領域から教科への分化について日常的に語り合っている。同じように幼稚園,中学校においても発達段階に応じて見られる子どもの姿を踏まえて「探究的な学び」をデザインし,実践について日常的に語り合う中で,継続的な学びを保障する学び方について省察し,互いに共有してきた。さらに,幼小中合同教員会等を通して,各校園の実践を共有している。 このように「探究」を窓口に保育・授業をデザインし,「3つの力」を共通の視点として子どもを捉え,学年間・学校段階間で共有することにより,一貫性・継続性を保障してきた。 (4)幼稚園~「思いや願い,問い」をもって主体的に環境にかかわっていく【遊び】~ 幼稚園では,「主体的に遊ぶ子どもは,自然と「3つの力」を発揮している」という保育者間の共通認識のもと,本園の教育目標である「遊びにうちこむ子ども」の実現に努めている。そのために,保育者は,対象に働きかけていく時の子どもの姿から,子どもの「思いや願い,問い」を,保育者間のカンファレンスを通して考えると共に,週毎に作成する「遊びの環境の構成図」に子どもの姿を記録することを積み重ねることで,子どもが「思いや願い,問い」をもって,主体的に遊んでいくことができるように,遊びの環境を構成している。また,その時期ならではの遊びや,その時の発達段階だからこそ楽しめる遊びなど,保育者の意図や願いを鑑みながら,子どもたちが豊かな遊びの経験を積み重ねていけるようにしている。 (5)小学校低学年~多様な見方・考え方を働かせて主体的に学んでいく【遊びの領域化】~ 小学校低学年では,子どもが「思いや願い,問い」に基づく活動中に働かせている見方・考え方の広がりを受容することによって,事象を多面的に捉え,子どもの発達に応じた探究を保障したいと考えている。そのために,子どもを観る視点である「3つの力」を基に,子どものよさを検討し続けている。子どもの発達段階,習熟度,経験値を考慮し,個に応じた探究の道筋が保障されるよう,教師はその子の何を捉えて,どう評価し,どう判断し,どう動くかといった教師の思考・判断を重ねていく。その際,授業者のみで省察を繰り返すのではなく,学年・教科等の枠を超えた多くの職員で,子どもの学びのよさと可能性について語りと傾聴を繰り返していく。教師は,合意形成を急がず,子どもがどのような学びをしてきたか(過去),そしてその子どもは何と対話しているか(現在),さらにはその子どもはこの先どうあるか(未来)を連続的に捉えることを試みている。45分でのねらいに固執して教師の思考・判断があるのではなく,単元全体を俯瞰して捉える中での教師の思考・判断を大切にしている。

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