総合人間科学系研究紹介2024
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支援室大学や研究機関にとって、研究により成果を生み出し、その成果を発表することは大きな使命ですが、生み出した研究成果を地域が抱える課題の解決に活用することも重要な役割の一つです。しかし、大学が単独で自ら研究成果を用いたビジネスを展開することは困難です。大学や研究機関における研究成果の活用には産業界や地域社会との協力が不可欠になります。その際に両者を結びつける橋が大学が生み出した知的財産を保護する知的財産権です。取得した知的財産権をもとに研究成果が適切かつ効果的に活用され、地域の社会課題が解決されるよう、産業界や地域社会と連携を進めています。アドミニストレーション本部研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像松山 紀里子 准教授岡山大学大学院工学研究科博士課程前期修了。特許事務所、山梨大学、慶應義塾大学、浜松医科大学、首都大学東京、慶應義塾大学病院を経て、2016年信州大学に着任。1級知的財産管理技能士(特許専門業務)、MBA。齋藤 正貴 准教授東京工業大学大学院計算工学専攻修了。経済産業省特許庁入庁後、電子商取引、送配電の電話通信等の特許審査及び、審査企画、審査基準、国際政策の業務に従事。2023年信州大学に人材交流にて着任。28基礎研究からビジネス展開までのシナリオ魔の川死の谷(応用研究)事業化(市場投入)ダーウィンの海6,000特許権その他の知的財産権等5,0004,0003,0002,0001,000H22H23H24H25H26H27H28H29H30H31国内の大学等の知的財産権等に基づく収入額の推移05296326406846132,2121,9921,4461,0921,558基礎研究開発1,5321,4831,1108119794,4113,6622,6842,5763,179ビジネス展開産業化大学等で行っている研究がビジネス展開に至るまでには、「魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」という3つの難所があると言われています(右図)。死力を尽くして努力とド根性で乗り切るのではなく、調査や情報分析に基づく実効性のある戦略、他機関との連携・協力等により、難所をスマートに攻略して、大学等の研究を1つでも多くイノベーション創出につなげる仕組みづくりを目指しています。多くの企業が“オープンイノベーション”を掲げて価値ある大学等の知的財産を探索しています。ダイヤの原石とも言える最先端の大学等の知的財産の価値をいち早く見極めて事業可能性を考え推進する力は、会社員だけでなく自ら起業する際にも役立つスキルです。知的財産権を鍵として、信州大学と産業界、地域社会が連携を深め、それぞれの強みを生かせば、地域の個々の課題を解決するだけでなく、地域を越えた社会システム自体を改善することができます。その結果として、信州大学と、産業界、地域社会がともに発展し、より良い未来の創造につながっていきます。大学や研究機関、産業界、地域社会をつなげる役割を担う知的財産の知識や考え方は、大学や研究機関、民間企業で知的財産を生み出す研究者や開発者を目指す方だけでなく、それらの組織内で知的財産の活用に携わる営業や企画を業種を選択される方にとっても有効なツールになると考えています。文部科学省「大学等における産学連携等実施状況について」に基づいて作成。大学等の知的財産権等のライセンスや譲渡による収入額は年々増加している。また、特許権以外の成果有体物や著作権等による収入が25%を占めている。イノベーションを創出するには3つの難所を越えるヒト・モノ・カネ・情報と、これらの資源を活かす「知恵」が必要になる。知的財産権は独占権ですが、活用方法は知的財産の「独占」だけではありません。他者との「連携」や自身の「信用」の確立等にも活用できます。どのような活用方法が適切か、知的財産に求める役割を考える必要があります。知的財産権をオープンイノベーションのツールとして利用すれば、連携先の組織を探索し、知的財産の実用化の規模を拡大することができます。知的財産権による裏付けがあれば、保持する知的財産の信用が増し、資金調達の際の道具として使えます。総合人間科学系学術研究・産学官連携推進機構リサーチアドミニストレーション室大学や研究機関は、研究成果を学会や論文誌で発表しているイメージが強いですが、研究成果の実用化や社会生活へ実装することも大学等の重要な使命の1つです。しかし、大学等が自らビジネス展開はできないため、研究成果の事業化は企業等へバトンを渡す必要があります。そこで、大学等で創出される研究成果の「知的財産」としての価値を評価して、特許出願や各種契約等により権利の保護と活用を図ることでその価値を最大化し、企業と共に世界を変えるイノベーションを創出につなげるための仕組みや知財戦略、企業との連携、大学発ベンチャーなどを研究しています。知的財産・ベンチャー総合人間科学系学術研究・産学官連携推進機構大学等で創出される知的財産の価値を最大化してイノベーション創出につなげる信州大学で創出される知的財産を用いて地域の社会システム改善に貢献する

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