総合人間科学系研究紹介2024
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データサイエンス教育部門データサイエンス教育部門研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像平井 佑樹 准教授東京学芸大学教育学部卒業、筑波大学大学院図書館情報メディア研究科博士後期課程修了(博士(情報学))。東京農工大学工学研究院、本学アドミッションセンターを経て、2022年1月より現職。専門は教育工学、情報工学。永井 康史 講師2017年慶應義塾大学理工学研究科修了 博士(理学)。その後オーストリア�英国での博士研究員を経て、2021年に信州大学助教。現職に至る。9演習問題の例。高校までに学習する内容に関する問題でも、問題文や選択肢の与え方によって、高度な理解力を問うこともできます。入学予定者がオンライン上で集う入学前教育においても協調作問演習を実施しています。 ※科研費基盤研究(C)課題番号:21K02797図2:正方形を繰り返した周期的なタイル張り図1:周期的ではないが概周期的なロビンソン三角形タイル張り図3:非周期的なタイル張りの概周期性を示す回折像「問題を作ることによる学習」については、20年以上前から国内外で多くの研究成果が示されており、様々な場面に応用されています。私はそれをクラスみんなで協力して行う「協調作問演習」に注目しています。ここでは、問題を作るだけではなく、作られた問題の良しあしを評価し、その評価に基づいて問題を洗練していきます。演習問題として完成させるには、問題文に誤字や脱字がないことはもちろん、解答可能な問題になっているか、教材に応じた問題かなどの確認も必要です。評価の際、実際に問題を解き、教材を再度確認することも行うので、単に問題を作ること以上の効果が見込めます。「タイル張り」を研究しています。タイル張りは幾何学的な図形ですが、代数や解析などの数学の他の分野と密接に関わっています。さらにシェヒトマン(2011年度ノーベル化学賞)が発見した「準結晶」を通じて物理や化学とも深い関係があります。準結晶の構造は「非周期的(ある1つの構造の繰り返しでない)」が、「周期的に『近い』(ある程度繰り返しがある、概周期的)」という不思議な性質を持ちます。このために、非周期的で概周期的なタイル張りを研究することが大切です。右図2が、正方形が周期的に並んでいる、周期的なタイル張りです。図1が非周期的だが概周期的なタイル張りです。教材に応じて協調作問演習を行うことで、皆さんの学習に役立つだけでなく教員の負担減にもつながります。特に、大学で行われる授業に応じた演習問題を多く作るためには、市販の問題集だけでは対応することが難しい場合もあり、担当教員の労力が必要です。協調作問演習を通して洗練された問題があれば、それをそのまま使うことも可能になり、担当教員は問題作成の時間を教材研究などに充てることができます。協調作問演習は学校現場だけでなく、企業における研修やお祭りなどでクイズ大会を開催する場合などにも応用できます。皆さんがそのようなイベントを企画する立場になったら、ぜひ活用してみてください。準結晶の発見は当時の化学の社会では完全に予想外だったようですが、実は似たような構造が可能であることはそれ以前に数学的に示されていました。数学者カントールは「数学の本質はその自由性にある」と言いました。自由に、かつ数学的な厳密性を保ちながら研究することは、数学の中に止まらないインパクトを持つと考えています。数学は複雑な現実から一部分だけ取り出してきてより単純な状況を研究するものなので、初めから1つずつ理解を積み重ねれば完全な理解を得ることができます。些細なことでも完全な理解を得ることは、その後どのような進路に進んでも役立つと思います。総合人間科学系全学教育センター総合人間科学系全学教育センター学習者同士で協調的に演習問題を作る活動を取り入れた授業の展開一見不可能な構造を数学的に解析する

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