総合人間科学系研究紹介2024
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自然科学教育部門自然科学教育部門研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像勝木 明夫 教授東北大学理学部化学科卒業、同理学研究科博士後期課程修了、博士(理学)取得後、日本学術振興会特別研究員(広島大学)、信州大学教育学部講師、助教授を経て、2006年全学教育機構に着任。現職に至る。伊藤 靖夫 准教授1994年 鳥取大学大学院連合農学研究科修了(博士�農学) / 学術振興会特別研究員(PD)を経て1996年 信州大学理学部助手(生物科学科)/ 2006年 全学教育機構(准教授)/ 現職に至る。7左が零磁場、右が強磁場下で成長させた銀樹。零磁場の条件では、樹枝状の銀樹が成長しているのに対し、強磁場の条件下では、長さがほぼ同じで、一方向へ傾いた銀樹が生成していることがわかる。磁場内で作成した高分子の薄膜。直径20 mm。通常の重力下では、この大きさの膜は割れてしまう。1975年2月24-27日 米国カリフォルニア州モントレー半島のこの場所でアシロマ会議が開催されました細胞にDNAを加えると、様々な変化がおこります磁場下で成長させた銀樹。銀樹はある角度方向に配向していることがわかる。自然科学の様々な分野の中で、化学は「もの」をあつかう学問になります。その「もの」を制御する方法として磁場と光を使う方法があります。磁場と光は「もの」の中の電子と相互に関係しあうことができます。これを相互作用といいます。この相互作用のために、「もの」は様々な顔を見せてくれるのです。特に磁場と「もの」との相互作用を扱う学問を磁気科学といいます。この相互作用についてはまだよくわからないところが多く、詳細な研究が必要な領域です。そこで強力な磁石である超伝導磁石を用いて、種々の反応系について研究を行っています。どんなことにも、始まりとその後の過程があります。現在、ゲノム編集とよばれるDNAの改変技術の始まりは、プラスミドと制限酵素の発見です。当時、無限の可能性を確信した人も、恐怖を感じ研究をやめた人もいました。その後の過程における第一歩は、重要性を理解した200人に満たない研究者が集まり、社会における位置づけを示したことでした。それがアシロマ会議です。以降40年、技術的には自由自在ともいえる時代になりました。しかし、当然、未解明なことも多々残っています。アミノ酸代謝と組換え装置の相互作用もそのうちの一つです。変化がはやく、新しい考え方がどんどん古くなる時代ですが、化学は「もの」の構造を考える、「もの」の性質を調べる、「もの」をつくる、など「もの」に関する基本的な分野です。本質的なところをブラックボックスにしないで、いろいろ新しいものに取り組めるような人になってください。電子はすべての「もの」に含まれていますから、磁場はすべての「もの」と相互作用することになります。ですから、強い磁石を使えば、どんな「もの」でも何らかの相互作用を示すことになります。この相互作用を応用することで、反応を制御する、新材料の開発をすることができます。磁気科学は基礎的な化学だけではなく、高分子、金属、医学など幅広い領域にまたがる研究分野です。下から積み重ねるにせよ、上から網をかぶせるにせよ、細胞内のできごとを動的に描ききることは、理由を問う必要もない、大きな夢です。アミノ酸の代謝系とDNAの組換え(損傷修復)系の相互作用は、なぜ備わっているのか? いつ、何をしているのか?簡単には説明することができません。しかし、そのようなつながりを丁寧に理解し、積み重ねることで、細胞の解像度が高まり、完成に近づきます。この10年、20年、40年間におこったことを考えれば、10年後、20年後の想定にもとづいて現在の行動を決めることは、多くの人にとって確かな意味はないでしょう。今、見えているものに誠実に向き合う。その積み重ねを大切に。総合人間科学系全学教育センター総合人間科学系全学教育センター磁場と光と「もの」との相互作用を制御する化学遺伝子を変える 細胞を描く

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