総合人間科学系研究紹介2024
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自然科学教育部門自然科学教育部門研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像安達 弘通 准教授東京大学卒業後、同大大学院にて学位取得。高エネルギー加速器研究機構を経て現職。共通教育では力学、電磁気学をはじめとする物理学関連の授業のほか、一般教養の授業も担当。三澤 透 教授長野市出身。東北大学理学部卒業、東京大学大学院理学系研究科修了後、ペンシルべニア州立大学博士研究員、理化学研究所基礎科学特別研究員を経て、2010年に信州大学全学教育機構に着任。現職に至る。6遠方宇宙にある明るい天体(クェーサー)からの光が、地球に届くまでに通過する様々な物質によって影絵(吸収線)が作られます。重力レンズ効果を使うと立体的な影絵が得られます。授業のようす1授業のようす2ハワイ島のすばる望遠鏡は標高4,200mの山頂にあります。エックス線はものにあたると突き抜けたり、吸収されたり、はね返されたりします。磁石にあたったときには磁石のN極とS極がどちらを向いているかで突き抜ける量や跳ね返される量が変わります。古くから知られている現象ですが、磁石の向きに依存して変化する割合はごくごくわずかであることがふつうです。私たちの研究室では、その割合を大きくする新しい原理を見出し、磁石の向きによってエックス線のはね返る量が倍ほども変わる現象を実現しました。このようなエックス線と磁石が織り成すさまざまな現象の研究やそれを利用した物質の解明、新しい技術の開発などを行っています。影絵のようなユニークな方法を利用して宇宙の研究をしています。宇宙には星や銀河のように明るく輝く天体がある一方で、暗い物質(星間ガス、銀河間ガスなど)も大量に漂っています。このような物質は、背後にある明るい天体(星やクェーサーなど)からの光を部分的に遮る効果を持ちます。ですから地球に到達した光を分光することによって、その天体の虹(スペクトル)に記録された影絵(吸収線)を通して調べることができるのです。このような観測をすばる望遠鏡などを使って行い、クェーサーの内部構造、宇宙の物質変遷の歴史、星間空間に漂う巨大分子、などを調べています。たとえば上に述べた成果は、磁石のNSを操作することでエックス線ビームの中に時間的、空間的な強度構造を作り込む未来技術の可能性を示唆しています。エックス線を使った超微細加工や放射線治療への応用が期待できます。またエックス線と磁石との相互作用はエックス線の偏光とよばれる情報を調べるうえでも役立つのです。エックス線を出しているブラックホールなどの観測研究にも貢献できるかもしれません。物理やそれを処理して行く数学の力は理科系の方であれば専門を理解して行くうえで土台となるものです。どこかで役に立つかもしれないと信じて、いっしょにがんばって行きましょう。ガリレオが自作の望遠鏡で天体観測を行ってから約400年。この間、望遠鏡の巨大化は目まぐるしく進みました。そして現在の主流は口径10メートルクラス。2030年代には口径30メートルクラスの望遠鏡が世界に複数台建設される予定です。これら次世代巨大望遠鏡を使って影絵の観測を行えば、宇宙膨張の直接的な検証、物理定数の普遍性の確認、銀河間ガスの3次元地図の作成、などが実現できるかもしれません。観測天文学研究室の卒業(修了)生の進路は、研究職、公務員、教員、一般企業(ソフトウェア、メーカー)と幅広く、様々な分野で活躍しています。天文学的なスケールで考えることができる人材が求められている証拠だと思います。総合人間科学系全学教育センター総合人間科学系全学教育センター磁性体一般、および放射光と磁性体の相互作用に関する教育・研究影絵を使った天体観測:ユニークな観測手法で見えない宇宙を探る

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